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猫を殺(と)れ(7)

Category : KILL THE CAT
テーマ : ひとりごと
ジャンル : 心と身体
ジジィには悪かったが、命には代えられない。
自分の領域で戦うのが最善と思われた。
ジジィに拾われた高層マンション群を抜け、「我が家」にたどり着いた。視線は相変わらず一定距離を置いて追従してくる。
家の裏の稽古場に入ると、息を殺し殺気をなるだけ抑え込み塀にぴたりと身を寄せた。
地面の表面の土を一握りナイフにふりかけ血糊と脂を取るように軽くこすりあわせ、ズボンの太腿でふき取った。
猫のように身を丸め、いつでも飛びかかれるように身構えた。
気配はどんどん近づいてきたが、塀の前でぴたりと足音すら消えた。
何分経っただろう。しゃがんだ足が、さっきの「仕事」で緊張したままなのか震えてきた。

「そこにいるアナタ、ハイネさんですね?私は怪しいものではありません。警戒を解いてください」
綺麗な発音の英語だった。私にわかるようにゆっくりと喋ってくれている。
祖国では皮肉なことに敵性国家の言語の習得が義務化されている。英語、日本語、南朝鮮語。
返事するべきか。罠か。しかし私の名前まで知っている。私の殺しの現場を見て、さらにそこからずっと追尾してきて、土塀一つ向こうの私を察知している。相当の手練れだ。
正面からやりあって勝てるかどうか。思案の末、賭けてみることにした。
「私は警戒を解かない。だがお前が両手を高く頭上にあげ、無防備を証明しゆっくりとこちらに入って来るなら、むやみに攻撃はしない。」
「約束してくれますか?あまり格闘は得意じゃないもので。」
「ああ。」

その返事と共に稽古場に姿を現したのは、小柄な男性だったが仕立てのよさそうなダークスーツを着ていた
「はじめまして、ハイネさん。すごいお手並みでしたね。両手は下ろしても?」
「おべっかはいい。手は上げたままでいろ」
その男の背後に回り、左手に持ち替えたナイフを男の右耳穴に2mmほど触れさせた。
普通の男ならそれだけで、恐怖のあまり微動だに出来なくなる。
その男も全身が強張った。
右手で手首から肩まで、両脇から腰、そして足首から股間までまんべんなくボディーチェックをした
違和感があった。
「おまえ、あるべきものがないぞ?」
「ふふふ、わかっちゃいました?私、戸籍上は女なんです」
聞こえてきたのは確かに女性の声だった。何が何やらわからなくなった。
「何か怪しいものがありましたか?」
今度は男の声だった。声さえも自由に操れるのか……。驚愕しながらも耳にあてがったナイフを離した
「手を下した途端、袖から銃が飛び出してズドンなんて嫌だからな」
「まさか。」
そう言って笑う顔は美人にも見えたし、美男子にも見えた。頭がおかしくなりそうだった。
「で、用事があるのは私か?ジジィか?」
ナイフは握ったまま尋ねた
「ジジィってイルカさん?」
「ああ。」
「両方だね。それよりここは目につきやすい。家に入れてくれるとたすかるんですが。」
それも一案。2対1ならこの手練れを始末することもたやすいだろう。
私やジジィの名前を知っていることに不安は隠せなかった。だがここまで来て引き返せようもなかった。
男を先に立たせてスーツの上から腎臓の位置にナイフをあてがい、扉を乱暴に叩いた
「おい!ジジィ!今帰ったが『荷物』付きだ。開けてくれ」
朝鮮語で呼びかけた。
ガタゴトと錠前を外す音が聞こえると扉が開いた。
ジジィは目の前に立つ男を見ると
「綺麗な女性じゃのう?どなたかいの?」
一発で女性と見抜いたジジィに驚いた。
「イルカさんですね?私はPMC『アヴァロン』のシュンと申します」
「おお……あなたがアヴァロンの……まあ中に入ってくだされ」
「ハイネもそのナイフはしまっていいぞ。この方は味方じゃ」
そう言い残すとさっさとシュンを食卓へ案内を始めた。

ちぇっ、折角初めての仕事が成功したって言うのに、褒めてもくれないのかよ
心の中で悪態をつきながら食卓へと向かった

(つづく)



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Response: コメント: 2  トラックバック: 0  Edit 01 15, 2012 Back to top
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Comment

今晩は 灰音さん。 毎回 楽しみに 読まさせて いただいています。 ワクワク ドキドキです! ただ 少しピッチが 早い様なので お体 大丈夫ですか? 書き終えて 又 調子を 崩されませんように。

ricacoさま

いつも読んでいただきありがとうございます
毎回、「Uninstall1.01」と「夏の凶悪」の時もそうでしたが、2~3話で終わらすつもりがいつの間にかダラダラと長く続けてしまっています
もうちょっと文才があれば、余分な贅肉をそぎ落とした読みやすく簡潔な物語になると思うのですが(笑)
思いついたままの下書きを、そのまま投稿しているようなものなのでピッチが速く感じられるかもしれませんが意欲が沸いた時にだけ書いているので、とりあえずは大丈夫です。
でも脱稿したらたぶん燃え尽きそうですが^^;
ご心配&応援ありがとうございます。
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