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猫を殺(と)れ (10)

Category : KILL THE CAT
テーマ : ひとりごと
ジャンル : 心と身体
スコープに張った俗にいうクロスヘアータイプのワイヤー越しに、ペプシの缶が揺らめいて見えた。
伏射、腹這いになった状態の体に地面のアスファルトの熱がどんどん伝わってくる。
スコープを覗く左目が渇く。
呼吸を止めて、そっと撫でるようにトリガーを引き絞った。
パスっという間の抜けた音がした。
スコープの向こうのペプシ缶は微動だにしなかった
「はずれだな」
チッ。舌打ちをしながら起き上がり、右目の眼帯を外した
「だ~めだこりゃあ。蜃気楼がひどくて調整にもなりゃしないぜ、旦那~」
「はずれだな」
「っるせ~な。繰り返すなっつーの。しっかしこのシグ・ブレイザー高かったのによ~」
単眼鏡から顔を上げたスキンヘッドの男がニヤニヤ笑った。
「そりゃ銃のせいじゃなくて、お前の腕じゃないのか?ライト」
「ば、馬鹿言うなよトミー。俺はAAAのキロメータースナイパーだっつ~の」
「SIG BLASER R93LRS。いくらパーツが全部左利き用にアジャスト出来るからって、今どきボルトアクションは無いんじゃないか?」
「な~に言ってんだよトミー、このブレイザーだって排莢口は変えられないんだぜ?セミオートで撃つたびに目の前をガンガン薬莢が飛んでくる身にもなってみろつーんだ」
「まあ、ここじゃこの滑走路くらいしか、1000m級の調整は出来ないしなぁ。左利きっていうのも難儀なものだなあ」
「あ~~こんなときシュンが居てくれたらなあ~。あいつ位だぜ、1キロ先の煙で風速読んだり、車の速度割り出して着弾予測するの」
「おまけに700mクラスなら必中だしな。お前は言われた通りに引金ひくだけってか?」
「そ~そ~、ってうるせえよ。スポッター(観測員)がスナイプ出来なきゃどうすんのよ」
そう毒づくライトの背中を誰かが指でつついた。
「うおっびっくりした!ミッフィーかよ!気配殺してちかづくなってばよ」
ミッフィーはニコニコ笑いながら背後に隠し持っていた6缶ケースのビールを差し出した。
「おう、こいつは気が利くな。ありがとうな、ミッフィー」
トミーがミッフィーの頭をグリグリ撫でた。
ミッフィーは照れくさそうにしている。
「おうおう、お暑いねぇ。で、冷えてるんだろうなそのビール。」
プラスティックで留められたビールを一缶もぎ取ると、ミッフィーはライトの頬に押し当てた。
「か~っ!いいね。さすがは我がチームのメディック!よく分かってるぅ~」
プシッとプルタブをあけると一気に飲み干した。
「ミッフィーちゃん、道具は持ってきてる?」
ライトの問いにコクッと答えたミッフィーはとても自分の体には不釣り合いなデザートイーグルを腰の後ろから抜き出した。
「よし、じゃあ晩飯賭けようぜ。この缶が落ちるまでに3発ヒットさせたら、メシは俺のおごりだ」
ミッフィーはコクリと頷いた
「俺も乗るぜ、ライト。ミッフィーがしくったらお前の飯、奢ってやるよ。そんかわり成功させたら2人分お前が奢れよ」
「ふっふっふ。これで2食浮いたぜ。いくぞ!」
ライトが宙高く、バドワイザーの缶を投げた。
最上昇点に達した時、しりもちをついた姿勢になったミッフィーが引金を引いた
ものすごい爆音が4回鳴った。カンと寂しげな音を立てて落ちてきたバドの缶は紙くずのようになっていた
反動でずり下がったミッフィーが立ちあがり、急いで立ち上がると缶を拾いに行った
戻ってきたミッフィーが手にしていたのは、もう缶とは言えなかった。
「どれどれ?」
トミーが判定にかかった。
「アルミ屑になっちゃいるが、きちんと射入口は4つみえるぞ、ほれ」
ライトに投げてよこした。
「まじかよ~~~?お前メディックだろ?しかもそんな大口径銃で、ありえね~~~」
「ライト……お前な。メディックはチームで最後まで生き残らなきゃいけない職だぞ?これぐらいできなくてどうするよ?」
「か~~~!俺も白衣の、じゃねぇな。迷彩服の天使がいるうちにいっちょ銃の当たりつけとくかぁ」
「よしよし、その意気だ。」
ライトは再び右目に眼帯をはめると伏射の位置についた。
「酔えば酔うほどってな。よっと。」
軽口とは逆にライトの体から冷気が漂ってくるようだった。
シグ・ブレイザーはストレートアクション機構だ。ボルトを手前に引けば排莢し、前に押し込めば次の弾が装填される。
次弾を装填したライトはまた優しく引金を引いた。
1km離れたペプシの缶の倒れる音が聞こえるようだった。
「命中。やればできるじゃないか、ライト」
ビールを飲みながら単眼鏡を覗いていたトミーが笑顔を見せた。
ミッフィーが後ろでぱちぱちと拍手している。
おもむろに起き上がったライトは、ガバっとミッフィーに抱き着くとほっぺにキスした。
「やっぱり天使ちゃんのおかげだぜ~」
ミッフィーは真っ赤になってうつむいていた。

「はい。そこの滑走路の馬鹿3人組、今すぐ滑走路から退去。まもなく着陸機がある」
管制塔からスピーカーでアナウンスがあった。
「ったく、管制官までガラ悪いな、ここじゃ。」
そう言いながらも銃や散らばった薬莢を拾い、トミーも単眼鏡やスコアシートをしまうと兵舎に向かって歩き始めた。
「そう言えば、シュンは東アジアの方に『買い付け』にいったんだろ~?」
「ああ。おそらくこの便で帰って来るんだろう。」
「マジか!うほっ愛しき恋女房だぜ!やっぱあいつとペアじゃないとな!」
「喜ぶのは早いぞ。『買い付け』たのはアサシンらしい。」
その途端ライトの表情は曇った。
「……ア、アサシンか……。」
「ああ。」

(つづく)




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Response: コメント: 4  トラックバック: 0  Edit 01 16, 2012 Back to top
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リンクさせていただきました。 事後承諾でもうしわけありません。

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三毛ニャンさま

了解です。ふふふ。

鍵コメさま

応援メッセージありがとうございます。
何度か原稿を見直してから投稿しているのですが
書いた本人だけの確認では、なかなか見落とす部分も多くて^^;
ご指摘ありがとうございました。早速直させていただきました
今後も応援よろしくお願いいたします
非公開コメント(非公開にした場合、匿名性を尊重しレスしない事があります)

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name:灰音(ハイネ)

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