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猫を殺(と)れ (34)

Category : KILL THE CAT
テーマ : ひとりごと
ジャンル : 心と身体
シュンとライトが家にたどり着いたのはもう夜10時を回っていた。
二人で交代で2週間ぶりのシャワーを浴びた。
後から入ったシュンがさっぱりして出てきたときにはライトはビールを一缶開けたまま
ソファーで横になり寝てしまっていた。もう冷え込む季節だ。
シュンはライトの部屋に入り、毛布を持ってくるとその体にかけた。
部屋に戻るとパソコンの電源を入れインターネットに繋げた。
「三池」と検索すると120万件以上のHITがあった。
次は「近澤どうぶつ病院」「東京」そして記憶していた電話番号を打ち込み検索をかけた。
一発でヒットした。ホームページに飛んだ。
住所が絵で描かれ、開業時間、閉業時間、サービス内容があった。
ん?と思うものが一番下にあった。「三池のお婆のネコ預かり屋」。クリックしてみる。
内容は、事情で飼えなくなった猫や、迷い猫、捨てられた猫などを預かってくれるらしい。
三池のお婆のイラストをクリックするとプロフィールと猫の預かられている部屋の写真が出てきた。
猫たちが広々とした芝生の上で遊んでる姿や、陽のさんさんと降り注ぐ部屋でくつろいでいる姿が貼り付けられてあった。
間違いない。この芝生のバックの背景は2週間見続けてきた三池邸の眺めと一緒だ。
だが2週間いて一度も猫の姿を見たことはなかった。ドーベルマンとボディガードだけだったはずだ。
プロフィールを見て驚いた。三池グループ名誉会長とある。三池物産、三池商事、三池石油。上げたらきりがない。
東日本を牛耳る一大グループの総帥とは……。
その「三池のお婆」が慈善事業として、猫の預かり屋をやっているという。
怪しい匂いがプンプンした。何かの裏の窓口か?ざっと考えてみたが、三池グループ総帥という名前の大きさに思考を邪魔されて、考えがまとまらなかった。とりあえずは臭う。明日はこのあたりをつつくことに決め寝た。

次の日、シュンは私鉄で2駅離れた駅から歩いて数分の「近澤どうぶつ病院」の前に立っていた。
隣にペットショップ、ペットグッズショップと並んでいた。経営方針なのだろうが、病院の横に店と言うのは妙に生理的に受け付けない嫌な感じを受けた。
すぐには店に入らず、近くにあった本屋に入り、猫関係の本を見る。結構な数の専門誌があった。
パラパラとページをめくるうちに一本の線が見えたような気がした。
店を出てトミーに電話をかけた。その足で、トミーの指示してくれたスピード印刷屋へ向かった。
急ぎの名刺を50枚刷ってもらった。名刺が刷り上がるまで、色々とトミーと電話で策を練ったが、ハズレでもこちらは痛みのない作戦だ、ストレートに行ってみようという結論になった。
刷り上がった名刺を持ち、近澤どうぶつ病院に戻った。写真に写したあの車もある。
病院のドアをくぐった。客は居ないようだった。
「こんにちは、今日はどうなさいましたか?」
ピンクのナース服を着た受付だか、配達か、何の職種か分からない女性が、目いっぱいの愛想を振りまいて尋ねてきた。
「すみません、今日は治療ではないんです。雑誌の編集の者なんですが、お話しできる方おられますかね?」
そう言って名刺を差し出した。名刺には「季刊 ねことも 編集部 巻場シュン 電話○○○-××××-△△△△」と刷ってある。
「あ、はあ……」
と、いささか困惑気味の様子で名刺を受け取ると、奥に下がっていった。勝手に受け付けのソファーに座り待つことにした。

「巻場さん」
帰ってきたさっきの女性がまたにこやかな笑顔を振りまいた
「事務長がお会いになるそうです。ここ真っ直ぐ進んでいただき、突き当りの部屋になります」
「ありがとうございます」
こちらも自分で魅力的と自覚している笑顔で返して
「で、事務長って言うのは?」
と、受付にグッと身を寄せて秘密の会話のように聞いてみた。女性は頬を赤らめるのを隠しもせず
「あ、い、院長先生の奥様でらっしゃいます。」
「うん、分かった。ありがとうね。じゃ、また。」
そう言い残し、プラスティックに「事務室」と書かれたプレートの貼られた扉の前に立つと扉をノックした。
「巻場ですが……」
「ああ、どうぞ~」
鷹揚な答えが返ってきた。これでプライドが高そうなら益々いいんだがと思い部屋に入った。
ビンゴ。
「で、アポイントメントもおとりにならず、一体どういうおつもりで?」
「い、いや何度かお電話は差し上げたのですが、いつも奥様ご多忙なようでして……」
「あ、あらそう。で、巻場さん、でしたねご用件は?」
「あ、それがですねー実は……」
そこまで行って頭を書くふりをして、いかにも困ったものの何やら照れくさくはにかんでる表情を浮かべた。
「巻場……シュンさん。シュンさんでいいわね?まあ立ってるのもあれだしそこら辺の椅子に座ったら?」
ここまで来たらもう交渉はほぼこっちの手の内で進んでいく。
「シュンとか呼ばれたら、何だか照れくさいですよ……」
「あら、きっとあなたのお母様より私がずっと年上よ。照れるなんて。」
「いや、奥様みたいに綺麗じゃないですし、若くもないですよ、うちの母は。」
事務長の脳みそが蕩けていく音が聞こえそうだった。
「まあシュンさんは、そんな事ばっかり言って……で、雑誌の仕事なんですってね?」
「あ、ああ、そうなんですが実はうちで猫の雑誌を出すのが初めてなんですよ。創刊号なんです」
「ええ、ええ、それで?」
「うちは弱小出版なもんで、一発目にドンとこう目を引く特集を組もうじゃないかと言うことになりまして」
「ふんふん、なるほど?」
「そこでですね、やっぱり街で目を引くあの車、充実したサービス内容、丁寧なアフターケアで評判のこの病院さんと」
「と?」
「『三池のお婆』のコーナーですよ!まああくまではこの病院メインで、奥様にもお写真など頂き、インタビューさせていただきたいんです。それとの連動企画、と言う事で、ここは奥様のお力を貸して頂いて三池さんへのインタビューや、猫ちゃんたちがどういう風に預かられているかという写真の撮影もお願いしたいんですよ。」
「ふふ~ん」
考え込んではいるがまんざらではないようだ。
「あの三池グループ総帥と奥様がタッグを組んでらっしゃるという事が大々的にメディアに載れば、それはもう……」
「……ねぇ。ほほほほほほ」
「いやらしい話ですが、僕もこの企画成功させないと……会社での立場が。。。是非助けていただけませんか?」
頭を下げた
「まあまあシュンちゃん」
シュンさんがシュンちゃんになっていた。
「うちはいいのよ、うちは。いつでも。きょうでもいいくらいよぉ~?でも、三池さんが結構お忙しい人だから、ちょっと待ってくれる?シュンちゃんも手ぶらでは帰れないでしょ、ね。電話してみるから。ね。ね。ちょっと部屋のすぐ外で待ってて。」
「あ、はい。ありがとうございます!」
そう言って事務長の手を両手でやんわり握りしめ、頭を下げた後、希望に胸躍らせる少年の表情で顔を上げた。
「大丈夫よ~~ちゃんとセッティングしてあげるから、ね。」
そういうと部屋から出ていけと言うように、手をヒラヒラっとさせた。

10分ほど待たされた後、部屋に呼ばれた。
「大丈夫よ。2週間以内に三池さんのほうで日程を繰り合わせて、自宅で合ってくれるそうよ。」
「あ、ありがとうございます奥様!」
口約束だけでは不安だ
「そ、その時はもちろん奥様も一緒に来ていただいて2ショット写真なんかも頂きたいのですが」
「当たり前じゃないの~。一緒に行くわよ、おめかししてね。ほほほほ」

そのあと2,3細かい段取りを決めて、病院を後にした。
ガッツポーズを小さくしたのは、病院が見えなくなってずっとしてからだった。
これであの「城」の中が探れる。シュンの喜びは大きかった。




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Response: コメント: 2  トラックバック: 0  Edit 01 23, 2012 Back to top
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Comment

灰音さん、貴方には最初に報告するよ。
暫くの間、お休みするね。
必ず戻ってくるから元気でね。
ご自愛を。

梅沢ロボトミヲさま

最近元気なかったみたいだし、一旦充電かな?
優しすぎる心を持った「ロボ」トミーは、いっぱい充電しなきゃね
立ってるだけで放電しちゃうから。
泣けて笑えて怒れるようになったらカムバック!プリーズ
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name:灰音(ハイネ)

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