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猫を殺(と)れ (38)

Category : KILL THE CAT
テーマ : ひとりごと
ジャンル : 心と身体
翌朝はけだるい酒宴の次の日のような感じで、皆物憂げにばらばらと起きた。
朝5時半に一回誰かのアラームがピピっと鳴った瞬間に全員がガバッと身を起こしたが、男性陣のシュラフの一つからシュンがもぞもぞと這い出し、何もなかったように腕時計のアラームを切り洗面所に向かうと皆が苦笑いしもう一度眠りについた。
私とミッフィーはデスクの奥のベッドを2人で使っていた。あったかいミッフィーを抱っこして寝るのは心地が良かった。
8時近くなりさすがに全員が起き始めた。私もまだ眠っていたかったが皆の身支度する音や、煙草に火をつける音で、ぼんやりと身体を起してトミーのデスクから灰皿と煙草を取るとベッドの上で胡坐をかいて、朝一番のニコチンを摂取することにいそしんだ。
ミッフィーはいつの間にか隣から抜け出していたようで、シュンと一緒に朝の食事の支度をしていた。
トミーもライトも伸びや欠伸をしながらシュラフに半分身体を突っ込んで、煙草を吸っていた。
「あ~もう煙草臭い。お前らプカプカ吸いすぎ!旦那、換気扇どこ?」
シュンは朝方なのか元気いっぱいだ。
「ああ、そのキッチンの隣の壁の、うん、そこ。そうそう、それそれ。」
トミーはもちろんこの時間には普段起きていないだろうから眠いに違いない。必死で目を覚まそうと瞼をシバシバさせている。
「ハイネもほら、かたっぽ乳でてる!シャツちゃんと着て!お前も女なんだしそろそろ料理ぐらい覚えろ!」
「人を三枚に下ろすぐらいしか能がないもんで。へへへ。」
私まで怒られた。全員に何か言わないといけない性分は変わってないなと思いながら寝間着代わりのシャツのボタンを留めた。
「ライト!ライトは起きたら朝の薬さっさと飲む。んで俺のシュラフも畳んでおく!」
「う~い」
ライトもまだ寝たりないのか、頭をボリボリ書きながら薬の袋をゴソゴソと探っている。
朝のメニューはトーストにカリカリに焼いたベーコンを敷き並べて、その上に目玉焼きを乗せたものと、舌がやけどするくらい暑いコーヒー、オニオンスープだった。キッチンにあるテーブルは4人掛けなので、一番最後にキッチンに向かった私がガステーブルの横で立って食べた。
「まるでキャンプだね~」
「ブートキャンプだがな」
「シュン、このスープちょっと味濃くない?」
「ハイネ……何だったらお前が明日から食事作るか?」
「い、いやなんでもないです」
こんな朝がずっと続けばいいなと思った。昨夜あれからトミーの夢の話を聞いた。イタリアの話を。
降りるやつは、降りてもいいと。誰も降りはしなかった。だからきっと皆同じようにこんな朝が続くことを望んでると思った。
その話で誰もが興奮し、高揚していたのだろう。なかなか寝付けれず、おかげで睡眠不足だ。
食事が終わり、洗物ぐらいは私がやろうと思い流し台に立ってミッフィーが片付けてくる食器を洗っていると後ろから呻きながら笑いをこらえる気配とヤジが飛んできた。
「ハイネ、っぷ、それ……くっ、いつのラブコメ野郎だよ、ぶふっ」
「な、何がおかしい?」
「だって……っく、その恰好。っぷ……下着にシャツだけって、誰誘ってるんだよ」
「あ~うるさいなあ。寝間着とかもってないし、下はジーンズぐらいしか持ってきてないもん」
「やばいだろ~……っくっく、その後ろ姿で洗い物とかは~……っぷ」
「ライトまで。はいはいもうやめた。あとミッフィーちゃんよろしく~。私煙草~」
手を拭いたタオルを思いっ切り言い出しっぺのシュンに投げつけて、ベッドにこれ見よがしに胡坐をかいて煙草を吸った。
「あ~やっぱりハイネはそっちの方がしっくりくるね~」
フォローのつもりだろうが、全然フォローになってない。しかもみんな同意して頷いている。
笑いが収まって、シンとした空気が広がった。皆この静寂が怖くて、何か笑える話題を必死になって探している。
「ああ、そうだ。まずは皆に今回のミッションで使う道具を渡しておこうか。各自管理した方が良いだろう」
トミーが口を開き、椅子から立ち上がるとデスクの所まで来ると、私に軽い意味ありげなウインクをすると、キィの束を持ってワードローブの前に立った。3つのワードローブの鍵を次々に開けて行った。
扉を開けるとそこには結構な数の火器類が収まっていた。一同がどよめいた。
「え~まずはライト。ポジションはスナイパーとアサルト(突撃)援護。メインは俺が渡すから、サブは自分で決めろ。ほれ、ドラグノフだ。シグが手に入らなくてな。今回はこれで。お前もこっちが慣れてていいだろう?」
「うん~。スナイパー1名編成なら連射の早いSVD(ドラグノフ)の方が良いよ。あれだろ?どうせ本番一発で標準合わせでしょ~。練習なんてできないもんね~。」
「そのとおり、渡すぞ。」
「うん。あ、あれ?この銃って……やっぱり!シリアル№が一緒だ~どうしたのこれ?」
「さすがに持ちなれた銃の事は分かっちまうか。除隊の時購買部のミドリさんに下取りに出しただろ?ミドリさんに声かけて転売しないよう保管してもらってたんだ。さすがにシグはすぐ売り手が付いちゃってて無理だったらしいんだ。」
「え~嬉しいな~。やっぱり使い慣れたのが一番いいよ。でもミドリさんって意外とやる人なんだね。知らなかった」
「あの人にあの基地で嫌われたら、買い物何にもできないからな。弾も買えなくなって転職だぜ?影の司令官とはあの人の事よ」
「すごい人だったんだな」
「そうだぞ、ハイネ。お前のトカレフもほら。そして「ハイネの黒ナイフ」だ。2本揃ってるぞ。」
「うは、やった。ミドリさんサンキュー!」
「そしてミッフィーには、これだ。ファーストエイドキットと!デザートイーグル50AE!」
大切なおもちゃを扱うように受け取っている。
「で、シュンだが、もちろん武装はしていけない。だろ?」
「ああ、まあそうだな。ボディーチェックがあったら一発でアウトだからな。細身のナイフでもあればいいんだが……」
「う~ん。まあ持っていかないならもっていかないで徹底した方が良いだろう。ただ武器だけは選んでおいてくれ。俺達が突入した際、パックごと渡すことになると思う」
「ああ。わかった。そうする。」
「弾丸とマガジンは各自この下の引き出しから選んで持って行ってくれ。持てるだけな。今回のミッションはサーチアンドデストロイでいくからな。弾切れなんてシャレにもならんぞ」
サーチアンドデストロイ=見たら殺せ=皆殺しだ。皆の気がピンと張った。
「じゃあ、かかれ」
その声を合図に全員がバタバタと準備にかかった。
私は新聞紙と油紙に包装されたナイフを二本ともチェックした。両方刃こぼれも無くサビも浮いていない良好な状態だ。
トカレフはライフリングにサビが見えた。即、デスクを借り分解すると、トミーのキットを使って掃除を始めた。
皆がそれぞれの武器の点検整備を黙々とこなす時間が過ぎて行った。
シュンだけは全員分のカナル式無線機のチェックを行ったり、電池交換をキッチンでやっていた。
サビ浮剤が浸透するあいだに7.62mmトカレフ弾とマガジンを取りに行った。今回はマガジンも多い。14個あった。
まだ開けてない引き出しがあったので開けようとしてると、トミーが俺がやるから、と手で制した。
また作業に戻った。ピストルのライフリングについたサビは力づくで擦って落としてはいけない。
無理をすると折角計算され尽くして切ってある溝に傷をつけてしまうからだ。根気よくやるしかない。
皆もう点検整備が終わりかけているのは、除隊前のミッションの後、ちゃんと整備してあるからだ。
私はナイフは磨き血脂をおとし、オイルを塗って保存しておいたが、トカレフなど誰も使うまいと、そのままにしてきたのが仇になった。
もうみんなが完全に片づけを終え、手を洗う頃私も組み立てを終えてスライドの動き具合や、マガジンの挿入具合の最終確認に移っていた。

作業の様子を覗っていたトミーが、引き出しを開けて、皆に迷彩服と首の部分を伸ばすと覆面にもなるロングハイネック、タイツ編みの薄手アンダーシャツ、鉄板入りジップアップ式のコンバットブーツを配って回った。
ビニールの包装に「ミッフィー」とか「ハイネ」とそれぞれの名前が書いてあった。
誰と言う事もなく試着しだしたので、私もしてみた。上着、ズボンはおろか靴のサイズまでぴったりだった。
隣にいたミッフィーもぴったりだった。全員がフィットするサイズの服になっていた。
「これもミドリさんのデータかい~?」
「ああ、ライト、正解だ。あの人は多分全隊員の身長から体重まで知ってるだろうな」
「さすが影の司令官……。」
「ベルトやベストはここにあるからな。好きなのを取ってくれ」
「……いいな。俺も着たかった。」
シュンの漏らした一言で張りつめていた空気がまた穏やかになった。






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