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猫を殺(と)れ (39)

Category : KILL THE CAT
テーマ : ひとりごと
ジャンル : 心と身体
私達は砂漠にいたころから、朝食べた日は昼を抜き、昼食べる日は朝の食事をしなかった。
単に作戦行動の時間の都合上だったのがいつの間にか慣習になっていた。
その慣習に乗っ取り今日の昼は誰も食べようと言い出さなかった。私はコーヒーを淹れ煙草を咥えて、ワードローブの前でゴロリと横になり天井を見上げた。
まだ体が本調子じゃない感じだった。午前中動いただけで疲れが出ていた。
迷彩服が部屋着にもちょうどよく、固さを取るためにも着て過ごす事にした。
「皆にも一応聞いておいてほしいんだが……」
トミーの一声で全員が身体を起し、トミーに視線を集中させた。
「この包み紙は嫌ほど見たよな?」
それは砂漠でもお世話になり、さっきも見たばっかりの『Dolphin Trading Company』のイルカの絵が描かれているブルーのストライプ模様の包装紙だった。
「で、こっちをみてくれるかな」
次にトミーがポケットから出したのは、同じデザインで名前の部分だけが『Dolphin Trading Company』から『いるかちゃん商会』となっていた。そういえばアヴァロンの整備士が本社は日本だと言ってたなと思いだした。
「この石鹸からミサイルまで扱っているいるかちゃん商会が今度のターゲットの三池グループの傘下の企業だ。」
「じゃあ、天下の三池グループが表はクリーンな会社で、裏は『死の商人』と言う事か?」
「ああ、その通りだ、シュン。そして次にこれを見てくれ。これはシュンの撮影した写真だが……」
そう言ってノートパソコンを開いて皆に見えるようにした。
「食料配達の車、あれを解像度を上げて、フィルターをかけてみると、こうなる」
あの有名な黒い猫のマークの宅急便と同じバンに『いるかちゃん宅急便』と鮮やかなブルーの文字とイルカの絵がうっすらと見えた。
「ここでも『いるかちゃん』が出てくる。シルバーに塗りつぶしているがな。」
「ふむ。それで?」
「俺はあのバンで運ばれているのは、食料品だけじゃないとにらんでいる。帳簿にかけない汚れた金を、三池の自宅で洗ってるに違いないと思ってるんだ。」
「旦那?だからなんだよ?」
「遠慮せずに暴れていいってことだよ。相手も表立っては警察を呼んだりは出来ないって事だ」
「なるほど、強奪されても泣きつく先はないという事か」
「そうだ。」
「あ、それについて関係あるかどうかは分からないが、ちょっとした話があるんだ」
思い出したことがあった。
「私が中国で世話になった老人、あの人がイルカと言う名前で。覚えてるよな、シュン?」
「ああ、確かに。」
「子と孫が日本に居るんだと。一子相伝と言う秘伝があるほどの拳法使いの血筋だそうだ。」
「イルカなんて姓は日本にも滅多にないからな。まあどうかな?関係は分からないな」
「ただジジィに言われたのは、出くわしたら逃げろ。だったからな。ちょっと気になった。」
「……まあ、改めてポジションの確認をしようか。」
そう言うとデスク脇から丸めた地図を持ってくるとフロアに広げた。
シュンとライトの行った偵察の報告が綿密に書き込まれている。
「まずはライト。ライトはこれまで監視をしていたポイントからの狙撃と突入援護だ。SVD(ドラグノフ)の弾がなくなるか、下の状況次第でポイントを離脱して、突入してくれ。」
「はいよ~」
「シュン。シュンは動物病院の奥様と一緒に三池邸に潜入。第一目標は、金庫の位置探索。第二に突入組の侵入援護。第三に人質確保だ。人質は三池総帥のみでいい。動物病院の奥さんは排除しろ。あとあと荷物になる。それと無理はするな。金も大事だが、全員無事帰還がもっと大事だ。」
「了解。と言っても逃げ場はないんだけどね、ははは。」
「逃げ場は俺達が必ず切り開く」
「期待してるよ」
「次は俺とハイネ、ミッフィーの突入組だ。この山の麓の監視カメラから100m程で大きなブラインドカーブがある。ここはカメラからも邸宅からも死角になる唯一のポイントだ。ここで車をジャックしたのち、邸宅へ乗り込む。俺達が車を降りた時点で作戦開始だ。サーチアンドデストロイだ。邸宅で見かけた奴は皆排除しろ。そしてシュンの安全確保、金庫探索。この順番で優先してくれ。」
「OK」
コクリと頷くミッフィー。
何度か地図上でのシュミレーションを行った後、計画の大幅変更はないことを確認し合った。
全ての確認が終わった時、時計はもう夜8時を回っていた。
ミッフィーとシュンがボンレスハムを3cm程に分厚く切り、フライパンで両面がカリカリになるまで焼いたものを手早く作った。あとはロールパンにマーガリンかジャムを塗って晩の食事にした。
質素だがボリュームのあるハムが肉汁をたっぷりと含んでいて、食べ応えのあるものだった。
あとはそのままの流れで、シュンがハムの残りを細かく刻んだものにマヨネーズと醤油をかけ、それを菜にして酒の飲めるものは酒を飲んだ。私とミッフィーはコーヒー組だった。
昔のミッションの話で皆が盛り上がる中、私はぼうっとジジィの孫の事を考えていた。
もし邸宅のガードマンに紛れ込んでいたら、私は勝てるだろうか?
おそらく私よりは若いはずだ。若い男のパワーとその技量に勝る立ち回りができるだろうか?
妙に気になって仕方がなかったが、元々この作戦はぶっつけ本番のカミカゼアタックだ。
いちいち細かく先の事を考えても仕方ないかと思い、皆に一言だけ声をかけてベッドに入った。
やはり疲れていた。あまり考えるのは向いていないのだろう。
ミッフィーが何かを察したのかベッドに飛び込んできて、心配そうな顔で覗き込んできた。
「大丈夫。ミッフィー。ちょっと疲れただけ。ミッフィーももう寝るの?」
そう尋ねるとコクリと頷き、私にくっついて目を閉じた。
ミッフィーの髪を撫でていると、あっという間に規則的な寝息を立て始めた。
私もその呼吸に自分の呼吸のタイミングを合わせているうちに、いつの間にか眠りについていた。





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