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猫を殺(と)れ (43)

Category : KILL THE CAT
テーマ : ひとりごと
ジャンル : 心と身体
作品中に過激な表現や嫌悪感を催す表現が含まれます
これらが苦手な方や気分のすぐれない方
躁鬱の波が現在極端に振れている方は
これより先に読み進めない事を強く推奨いたします
これらの警告を無視し読み進めた場合の気分の弊害などにつきましては
当サイトは一切関知いたしません
ご理解いただける方のみ続きをご覧ください




シュンと近澤夫人を勝手口の向こうで出迎えてくれたのは大きな猫を抱いた三池総帥その人だった。
夫人と同い年とは思えない若さに驚いた。
「あらあら、こんにちは。お若い記者さんね。今日はよろしくお願いしますね」
「いえ、こちらこそ恐縮です。わざわざのお迎えありがとうございます。季刊ねことも編集部の巻場シュンと申します。今日はよろしくお願いいたします。」
「はいはい。巻場さんね。そう固くならないで結構よ。さあこっちですどうぞ」
「ほらね、シュンちゃん。言ったでしょ。そんなに固くならないで大丈夫よ」
「あ、はい。どうも。失礼いたします。」
第一関門はあっけなく突破した。ボディーチェックも全くなかった。
近澤夫人に信頼を寄せているのだろう。夫人の紹介で無かったらこうはいかなかっただろう。
「お話はどうしましょうね、巻場さん。応接室がいいかしら?猫ちゃんたちの部屋がいいかしら?」
「あら、それなら猫ちゃんの部屋がいいじゃない。どうせ写真も撮りに行くんだし。ねえシュンちゃん?」
この婆、いらない事言ってんじゃねえ。応接室と言うのも気になったが、この話の流れを切るのは上手くなかった。
「あ、はい。それじゃあ是非猫ちゃんの部屋で。早速拝見できるんですねぇ」
「はいはい。普段は滅多に他人は通さないんだけど。近澤さんも2回目?3回目?」
「そうねえ……3度目かしら?猫ちゃんたちがもう愛くるしくってね~」
普段は人を通さない……か。怪しいな。でも動物の中に……いや……シュンの中をぐるぐると憶測が駆け巡った。
「じゃ、お二階に行きましょうかね」
「はい。よろしくお願いします」
そう言い、三池総帥のあとにつき階段の踊り場に差し掛かった時、2階から突き刺さるような視線を感じた。
反射的に見上げそうになったが、シュンの頭が「今見てはいけない」と警鐘を鳴らした。
シュンは何も気づかないふりをして階段を昇り切った。
「さあ、こっちですよ巻場さん」
案内されるがままに2階を進むと、さっきの視線の主に出会った。
5人の迷彩服を着た男達だった。目だって大きな白人と中肉中背の東洋人がこっちを見ていた。
一瞬目が合い、軽く目礼をした。シュンの鼓動が跳ね上がった。見たことある。見たことあるぞ、こいつら。
目の合わなかった他の3人の横顔をさっと見ただけでも見覚えのある顔だった。どこだ?どこで会った?
男達から目をそらし黙って目の前を通り過ぎた時、背後から声がかかった。
「おい、兄ちゃん。どっかで会った顔だな?」
反射的に振り向きそうな自分を抑える。ゆっくり不思議そうな顔をして振り返る。英語の全く分からないふりをした。
近澤夫人もキョトンとした顔をして振り返っていた。大柄の白人は困った顔をして肩をすくめて視線を外した。
また前を向き、三池総帥に声をかけた
「いやあ、邸内はあたたかいですね~」
「あら、そう?外はそんなに寒いの?近澤さん」
「ええ、もう11月よ。結構寒かったわよ?ねえシュンちゃん」
「え、ええ。」
中は危険、そういう符号だった。今のシュンには通じていることを祈るしかなかった。
部屋の前についた様だった。
「よっこらせ」
両腕で抱いていた猫を片手で抱きかかえ上げると、部屋のドアにあるセキュリティーに指を突っ込み、顔も近づけた。
網膜認証と指紋認証か。
ますます怪しくなってきた。あの男たちの存在も気になった。金庫が2階にあるのは間違いなかった。
しかしどこで会った。どこで見た。シュンの頭の中で記憶のファイルのページが音を立てて次々とめくれていった。
ピッという認証完了の音と共に、ドアを開けてくれた三池総帥に続いて3人で部屋の中へと入った。後ろで扉の閉まる音がした。
「いやあ、すごいですね。セキュリティー。」
そう言いながら振り返って部屋の中からドアを見た。中からは普通に出られるようだった。
「お預かりしてる大切な猫ちゃん達ですからねぇ。でも中からは普通に出られるのよ。閉じ込められちゃったら怖いでしょ?」
「ああ、なるほど~。だいじになさってるんですねー。」
「さあ、このテーブルでいいかしら?ここならお日様も当たるし暖かいわ。」
獣臭とかすかなアンモニアの香りの混ざった部屋はエアコンと空気清浄機でなんとか耐えられる程度の空気に保たれていた。
部屋の壁側一面のケージに猫が十数匹入っていた。まさに猫のアパートの様だった。
それを見た瞬間記憶の破片がピタッと当てはまった。
あいつらアヴァロンだ!
あの東洋人、『D』(ディー)とだけ呼ばれていたが、dolphinのDか!あれが「いるかちゃん」。あいつは、AAAランクの上に存在するただ一人のSクラスアサシンだったはず。他のメンバーも何かでSクラスの特殊技能を持つ特別チームだったはず。
通常の任務で一緒になることはまず無かったはずで、シュンもファイルでしかその存在を知らなかった。
だが、なんであいつらがここにいる?
はっ!
シュンの思考が一瞬凍りついた。
あの白人の別れ際の薄く浮かべた笑みを思い出した。傭兵は一度仲間だった奴を忘れない。
敵味方入り混じるような混乱した現場で同士討ちを避けるための必須のスキルだ。
あいつらは俺を知っている!このミッションは失敗だ。皆来てはいけない!
「さあ、おかけになって」
三池総帥がそう言うのと同時にバンっと銃声がした。遅かった。伝える手段がなかった。
銃声が激しくなって屋敷内もどたばたと人の出入りする音で騒がしくなった。
「あら、まあ何かしら?」
「何か、凄い音がしてるわよ?大丈夫?あれって銃声じゃないかし……」
言い終わらないうちに近澤夫人の首がシュンの手によってゴキッと音を立ててあさっての方角を向いた。
どさっと倒れた夫人の死体を跨ぎながら、シュンは左手首のシャツの袖口から一本のワイヤーをひっぱり出した。
両端が輪になるよう編まれただけのただ単純な極細のワイヤー。
トミーの店の地下で、ハイネに編み方を教わって暇つぶしに編んだものだった。
これだけは仕込んでおいて正解だった。
シュンはワイヤーを一瞬のうちに三池総帥の首に巻きつけた。
「総帥、座ってください。僕の言葉に従わないと、あなたの首は落ちます」
冷たく言い放たれたその言葉に総帥の力が抜けたのか、猫を抱いた手を離し椅子に座りこんだ。
猫はまた総帥の膝に飛び乗った。銃声がするたびにビクっと身体を強張らせて目を光らせていた。
ドアがドンドンと叩かれた。
「総帥、大丈夫ですか!?」
「大丈夫と答えて下さい」
「え……ええ。何も問題はないわ。何があったの?」
「賊の侵入です。出ないでください」
「わかったわ」
「上出来です。もう無駄口を叩かないでください。じっとして黙っててくださいね」
ゆっくりとワイヤーに力をこめた。
コクコクと涙を浮かべた表情の三池総帥が頷いた。
三池総帥の股からアンモニア臭がして椅子がビチャビチャと黄色い水滴を垂らした。
緊張と恐怖で漏らしたらしい。
ズンとひときわ大きな音がした後、銃声は屋敷内を近寄ってくるように響き始めた。
2階にいた男達だろうか。バタバタと走る足音が聞こえた。
胸元のICレコーダーに向かって呟いた。

「コンディション・レッドだ。敵の中にアヴァロンのSクラスチームが5人いる。『いるかちゃん』もいるぞ、ハイネ。気を付けろ。部屋は2階の東突き当りだ。おそらく敵チームを全滅させないと到達できない。現在三池総帥を人質に確保済み。繰り返す。相手はSクラス1チームだ。部屋に到達出来たら、ワン・ツー・スリーの3ノックで合図をくれ。」

弛緩した近澤夫人の股間に染みができ、糞尿の臭いが立ち上った。




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Response: コメント: 2  トラックバック: 0  Edit 01 25, 2012 Back to top
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鍵コメさま

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