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猫を殺(と)れ (46)

Category : KILL THE CAT
テーマ : ひとりごと
ジャンル : 心と身体
作品中に過激な表現や嫌悪感を催す表現が含まれます
これらが苦手な方や気分のすぐれない方
躁鬱の波が現在極端に振れている方は
これより先に読み進めない事を強く推奨いたします
これらの警告を無視し読み進めた場合の気分の弊害などにつきましては
当サイトは一切関知いたしません
ご理解いただける方のみ続きをご覧ください




ライトとシュンは周囲を警戒しながら2階を進んだ。
階段の踊り場で横たわるトミーとミッフィーの亡骸を目にして、現金を前に浮かれていた自分たちを叱りつけた。
シュンは前に出てトミーとミッフィーに優しく触れた後、トミーの腰からベレッタを引き抜いた。
「ちょっと借りるぜ、旦那」
そう言い残し、2人は階段を下りて行った。
一階にも特に妙な気配はなかった。
「どうやら奴は居なさそうだな」
「だね。でもそいつって相当ヤバいんだろ?シュン」
「ああ。激ヤバだ」
「会いたくねえなあ」
「向こうは聞いちゃくれねえよ」
「うん」
長い間ずっとペアだった二人は阿吽の呼吸でクルクルとお互いの位置を変えながら360度の警戒をしながら勝手口へと急いだ。
何も言わなくても相手のしたいことが分かる。
何を言わなくても向こうが察してくれる。
かけがえのないパートナーだった。
「やっぱ、俺はシュンが一番ニーニーだな」
「なんだよライト。だからニーニーってなんだっつうの。わけわかんねえ。」
「へへへ」
勝手口からは外の光が差し込み、少し暗い一階の廊下を歪んだ長方形に白く切り取っていた。
2人は飛び出すような迂闊な真似はせず、慎重にあたりを覗った。
ガードマンたちの死体が転がるばかりで、他に何の気配も感じ取れなかった。
ゆっくりと屋敷から外に出てバンの助手席側に回り込んだ。
シュンはまず自分の装備を身に着け、ベルトとベストを身に着けると、最後にヘッドセットのスイッチを入れ耳にねじ込んだ。
「こちらシュン。感度どうぞ」
「感度良好、ハイネ。異常はない?」
「ああ、どうやら大丈夫なようだ。ザックを持って戻るよ」
「了解。気を付けて。」
ライトに向けて親指を立てた。
ライトもこっちを振り向いて親指を立てた。
ザックを取ろうとバンの中に背を伸ばした時だった。

パンッ パンッパンッパン

乾いた音が鳴り響いたと思ったとたんに、シュンの背中にライトが重くのしかかった。
「ライト!やめろよ。こっちは忙しい……え?」
何だ、と思いシュンは体をひねり仰向けの体勢になった。
ライトがべったりもたれていたが、その背中越しにあの東洋人『D』(ディー)が銃を構えて立っているのが見えた。
「のけっ!ライトっ!敵だ!」
そこまで言ってふとライトの背中を見た。
背中には黒い穴が開き、その周りに染みが広がり始めていた。
「おいっ!ライトッ!大丈夫か!?ちょっとのけっ!」
「む……無理……」
そう言いながらもライトはゆっくりと腕立て伏せの要領で、ブルブル震えながらも腕を突っ張り身体を起した。
「シュンちゃん……ニーニー……」
「な、何言ってんだこんな時に!とにかく横になって休んでろ。俺が片付ける!」
「シュンちゃん……i need you(ニー),i need you(ニー)……」
「え?お前!?」
「駄目、もう限界……」

パンパンパンパンッ

また銃声が聞こえ、シュンの前に立ったライトの体がビクンビクンとその度に揺れ、ズルズルと地面に崩れていった。
シュンが怒りに震え見据えたDはにんまりと笑顔を浮かべていた。
「今のスナイパーだろ?な?そうだろ?距離を詰められたスナイパーって役に立たないよなぁ?精々が弾除けかぁ?ははは。こいつも山から下りてこなけりゃいいものを。何しに来たんだこいつ、なぁ?お嬢さんよぉ~!?」
「うるせぇな。よく動くベロだぜ。引き抜いてやるぜ」
俺達の情報が筒抜けだぜ、シュンはそう思いながら腰のベレッタを瞬時に抜き、トリガーを引き絞った。
パンッ
パンッ
パンッ
パンッ
パンッ
当たらない。見失った。その瞬間ナイフの切っ先がシュンの頬を撫でた。
「だぁめ、だぁめぇ!銃は狙う、構える、撃つ、の3アクション。ナイフは狙う、切るが一緒になった1モーション。目で追ってちゃ間に合わないよぉ~!ほらもっと早く動けよぉ~トリプルAさんよぉ~!!」
シュンの頬から血が垂れた。
Dが矢継ぎ早にナイフを繰り出す。
紙一重でかわせず、徐々に肉を削り取られていく。
銃に狙われず、自分だけが攻撃できる間合いをキープしながらDは踊るように攻撃を繰り出してくる。
全く歯の立たないいら立ちをシュンは隠せなかった。
「くそっ!」
「あ、今くそって言ったぁ?くそって言ったよねぇ?だぁめじゃあん!女の子がそんな事言っちゃあ!」
「女とか言うな!!」
シュンは銃を捨て、拳を握りこみ中指の関節だけを突出させると、Dの鼻と唇の間の人中を狙った必殺の突きを放った。
ゴンッと鈍い感触が拳に伝わり、Dが前方に吹っ飛んで行った。
大の字になって動かないDを見た。
とどめを刺そうと銃を拾いに前かがみになった途端、シュンの腹に鋭い膝蹴りが突き刺さった。
シュンはその場に膝立ちに崩れ、腹を押さえ胃の内容物を吐き出した。血が混じっている。
「いってぇなぁ、バカヤロウ!どんなもんか試しに受けてやりゃあ、思いっ切りドツキやがって!このメス豚ぁ!!」
Dは鼻血を拭いながら、嘔吐するシュンの尾てい骨を、思い切り鉄板入りのコンバットブーツで蹴りあげた。
シュンは前のめりに顔面から地面に這いつくばった。
腰椎がいったのか、腰から下がしびれて全く力が入らなかった。
「くっ」
腕の力だけで起き上がろうとするシュンの頭をブーツの底が踏みつけた。
「あのなぁ、トリプルAちゃんよ?トリプルAとSの間には深ぁあああい谷間があるのよ。決して飛び越えられない谷がな!1人でも2人でも3人でもぉおお!……無理無理無理無理!残念だったねぇ!お嬢さん」
Dの振り上げた足が思いきりシュンの後頭部にめり込んだ。
パキッ
シュンは自分の頭蓋骨の割れる音を聞いた。
「バイバイ」
Dはそう言うと背中を見せて後ろ手に手を振って邸内に向かっていこうとした。
バンッ
Dの左肩から血が吹きあがった。
「なにぃ?」
右手で左肩を抑えながらシュンの方を振り返った。
力尽きて地面におちた銃を持った手を持ち上げる事も出来ないシュンの姿があった。
口がパクパク動いていた。
何か言ってる様だったがDには聞き取れなかった。
「てんめぇえ!!何してくれてんだよぉっ!痛いじゃねぇかよ!!」
Dはツカツカツカとシュンに歩み寄って銃を蹴り飛ばした。
まだシュンの口はパクパクと動いていた。
「あぁん?何言ってんだよ?全然聞こえねえよ!?」
シュンの顔に自分の顔を近づけた。

「バーカ。ざまあみろ。海のブタと書いてイルカぁ……」

「その名前で人の事呼んでんじゃねぇぞ、ゴォルァアアアッ!!」
Dは激昂し、シュンの顔面をブーツのつま先で蹴り上げた。
シュンは動かなくなった。
それがシュンの最期だった。
シュンを見下ろしたDはシュンの顔を狙うように唾をいやらしく垂らした。
べちょっと言う音と共にシュンの頬を唾が垂れ流れた。

「そういやあ、まだもう一匹中にいるんだよな。聞こえてんだろ?お仲間2人は死んだぞぉぉおお!今行くからまってろよお!」
大声でヘッドセットに伝わるようそう吼えると、左肩をグルグル回しながら、Dは屋敷の中へと消えて行った。

「シュン……」

「シュンよぅ……」

ライトは全く動けなかった。
瞬きも出来ずに、どっちが上か下か分からない視界のまま目が乾くのを待つだけだった。
視界の片隅にぼんやりと見える「シュンだったもの」に声にならない声をかけた。
返事はなかった。
体中の体液が漏れ出しているのが分かった。
目の前が闇に覆われた。
やがて何も聞こえなくなった。
ライトはそこで息を引き取った。






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