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猫を殺(と)れ (47)

Category : KILL THE CAT
テーマ : ひとりごと
ジャンル : 心と身体
作品中に過激な表現や嫌悪感を催す表現が含まれます
これらが苦手な方や気分のすぐれない方
躁鬱の波が現在極端に振れている方は
これより先に読み進めない事を強く推奨いたします
これらの警告を無視し読み進めた場合の気分の弊害などにつきましては
当サイトは一切関知いたしません
ご理解いただける方のみ続きをご覧ください





二人の悲痛な最期を、始まりから終わりまで耳のヘッドセットは残酷なまでに、ダイレクトに私に届けてくれた。
役目を終えたヘッドセットを外し、背中から腰に釣った無線機本体も外し、テーブルの上に置いた。
ガンベルトも銃の出番はないと思い、ベルトを緩めてナイフの鞘ごし外して椅子の背もたれにかけた。
身軽になった。迷彩服の上着も脱ぎ、黒いハイネックシャツだけになった。
ベルトを締め直し、靴の紐を堅結びにかえ、屈伸運動をした。
大きく一回背伸びをした。
椅子にかかったナイフの鞘からナイフだけを2本抜き出し、両手に持った。
ここは狭い。そう思い、廊下で『D』を待ち受けることにした。
トミーとミッフィーが見えた。2人はもう居ない。
シュンもライトも居なくなった。
だが私が生き残ってカネを手にすれば、私達チーム全員の勝利だ。そう思った。
「こぉれはこれは!随分お待たせしちゃいましたね。ちょっとだけ下で手間取っちゃいましてねぇ。」
Dは左肩をべったりと血に染め、鼻の下の人中は真っ黒い打撃痕が残っていた。
「あっと、躓いたぁ。あぶねぇ。」
何もないところで躓いた。ダメージは残っているようだ。
頭を左右に振って首をコキコキ鳴らしながら階段を昇ってくる。
右手と右足を前にだし、腰を落として戦いに備えた。
「あぁるぇええ!?やる気とか出しちゃってるわけぇ?まっさっか、勝てるとでも!?くっくっく」
「当たり前だバカヤロウ」
「んまっ!お下品お下品!そんな言葉遣いをしちゃあだぁめぇだよぉおお!」
階段を昇り終わると同時にDが驚くべき速さで胸元に食い込んできた。
一撃。
かわす。
折り返しの一撃。
ナイフの峰で受け流す。
ぱっとDが距離を取った。
「ふうん。今の2発ともかわしちゃうんだ?へぇ。一応名前聞いとこうか?」
「ハイネ」
「あっそ。ハイネか。すぐ忘れそうだけど、忘れたらごめんねっとぉおおっ!!」
また飛び込んでくる。
出入りのスピードが半端じゃなく早い。
ピッ
風きり音と同時に耳たぶを切られた。
ダンッ!
逆足の左足で踏み込み、Dのブーツを踏みつけ左で付いて、右で薙いだ。
パンッ
その場でバック宙をした勢いで足を引き抜かれた。
ここは距離を取ると見せて、また来る。読んだ。
逆に思いきりこちらも踏み込みながら右手で薙いだ。
軽い手ごたえ。
「くそっ、んなろう。ちょっとだけは、やるねぇ。」
「来い、イルカ。」
「その名前で呼ぶなって言ってんだろうがよぉおおおっ!!」
ビュンッ
ヒュッ
見える。かわせる。ジジイの言葉が蘇る。
(戦いにおいて一番大切な事は『相手の攻撃ポイントを見切る』ことじゃ)
ヒュンッ
突いてきた右手首を左手のナイフで軽く薙いだ。
血が飛び散った。バターのように手首を深くえぐり取った。
Dが今度はよろけながら本当に距離を取った。
「てめぇ!どうもやり辛いと思ったらその動きは同門かよ!」
「だからなんだよ?」
「うるせえ!お前はそのメンス臭い口開くんじゃねぇよ!俺に聞かれたことだけ答えろ!」
「だからなんだよ?」
「俺の親父は俺にしかこの武術を伝えてないはずなんだ。武術嫌いだったからな」
「それで?」
「だぁかぁらぁ!誰に習ったか聞いてんだよボケェ!!察しろよぉ!」
「お前のジジイにだよ、イルカ。北京でな。」
「くそっ!マジかよ。じゃあ本気出さなくちゃいけねぇなあっ!」
一瞬Dが目の前からいなくなった。
気付くと背後に背中合わせに立っていた。
振り返る暇もなく強烈なひじ打ちが腎臓に突き刺さった。
もんどりうって前のめりによろけた。
「この技ぁ喰らったことないだろうが、えぇ?これが一子相伝の技だよ」
何かが胃の中をこみあげてきた。
我慢できずに思いきり吐いた。
どす黒い血が噴水のように噴出して息ができなくなった。
だが吐くとちょっとは楽になった。
もう一度きちんと構えた。
「あらぁ?ちょっとズレちゃったぁ?平気なの?ねぇ、あんた平気なの?」
「いいから、来いよD」
「恰好つけちゃってぇええ!!」
ビュッ
消えた。
ここか?
ぐるんとターンすると同時に体を沈めこませた。
チリッ
火傷しそうな勢いの威力のある肘が頭をかすめた。
肘の引き際を狙って、負傷している左肩にナイフを深々と突き立てた。
「ガァッ!」
ナイフが刺さったままDはヨタヨタっと前方へよろけた。
もう一度体を深く沈みこませスライディングしながらDの左足のアキレス腱を切った。
これであの瞬間移動のような瞬発力はでないだろう。
深追いはしなかった。
また構えた。
「お前なぁっ!痛い!痛すぎるぜぇっこれっ!もうお前死ね!というか殺すっ!」
Dは自分で左肩に刺さったナイフを引き抜いて捨てた。
迷彩服に広がる血の染みが広がるスピードが増した。
完全に油断していた。
一瞬のすきというよりも集中力の合間を縫って瞬きのスピードでDが消えた。
アッと思った時には腰から上にバイクでもぶつかってきたのかと思うほどの衝撃を受け吹っ飛んだ。
ゴボッ
今度はさっきと全く比べ物にならないほどの塊が込み上げてきた。
喉を通るにも異物感があった。
ゴバッ
大きな血の塊が口から飛び出した。
内臓が出たのかと思った。
「うん。今のはちゃんと脾臓に入ったな。お前は死ぬよ、ハイネ」
アキレス腱を切ってもあのスピード……
そしてこの技の威力……
横たわる寸前で体を支えている腕も、両足の膝もガクガクと笑っていた。
立てなかった。
私は恐怖した。
ズリズリとそのままの体勢で這いながら下がった。
「待てよぉお、こっちももうそんなに歩けねぇんだよおッ!!待てつってんだろうがオラッ!」
片足を引き摺りながらDが追ってくる
恐くてたまらなかった
「あ~血ぃ流しすぎたかな?フラフラするぞ?もう決着つけようぜぇええっ!!」
私がさっきの攻撃を受けた時に取り落したナイフをDが拾った。
「めんどくせぇえええ!!ああ、もうめんどくせえええ!!これで死ねっ!!!」
そう言うと一気に私めがけて跳躍してきた。

(ナイフ使いは飛んだら負けじゃよ)

ジジイの声が蘇った。
左手が大きな金属の塊を触った。
すぐに何か判り、両手で構えるとD目がけて引金を引いた。

ドンッ

Dは空中で衝撃を受け、足を大の字に開いて上半身だけ起した。
「え?あ、あら?な、なにこれ?」
それだけ言うと、左胸から先が無いDがそのままグンニャリと前に倒れた。
私の手にはミッフィーの亡骸の足元にあったデザートイーグル50AEが握られていた
振り返った。
ミッフィーのすぐそばまで来ていた。
助けられた。
そう思った。

また咳が込み上げてきた。
バケツをひっくり返したような勢いと量で吐血した。
身体が寒くなってきた。
立たなくては、と思ったがひどい眠気が襲ってきた。
起していた体を床に倒し、大きくため息をついた。
だんだん瞼が重くなってきた。
寒い。

ただ寒い。







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Response: コメント: 0  トラックバック: 0  Edit 01 26, 2012 Back to top
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