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夏の凶悪(5)

Category : 夏の凶悪
テーマ : 双極性障害(躁鬱病)
ジャンル : 心と身体
男たちの前を通り過ぎながら、横目でちらっと様子をうかがった
相変わらずジャージがもう弾の入っていない銃を振りかざして、男たちを威嚇している
空のマガジンを突っ込んでチャンバー内の一発もレジの破壊に使った。残弾は0になっている。
そのまま窓際まで行き、雑誌コーナーとコピー機の間のスペースに体をねじ込み、ブラインドをわずかに指で広げて外の様子をうかがった。

パトカーが赤色灯を回して、5台側面をコンビニ側に向かってアーチを描くように並んで包囲している
その奥に窓に金網を張り、車体をブルーに塗られた機動隊輸送用の大型バスが威圧するように停まっていた
さらにその奥には「高知県警察」とステッカーを貼った赤いパイロンに、黄色いテープを貼リめぐらせて一般人の侵入ができないようになっていた。
一旦ブラインドを閉じこめかみを押さえた。また例の頭痛だ。冷房が効いているのに全身から気持ち悪いベトついた汗が湧き出てくる。OL達を解放してからもう1時間半が経とうとしている。誰かが電話したとしたら、この配備は当たり前のことだ。

ボルタレンを取り出し、奥歯ですり潰すと唾で嚥下した。背を低くし雑誌コーナーを抜けて、ドリンクコーナーの冷蔵庫にたどり着くとエビアンを一本取り出し、封を切るとうがいをするように流しこんだ。
軽く頭を左右に振ると、首がコキコキっと音を立てた。ショーの開幕を前に緊張しているようだった。
肩を力いっぱいすくめて持ち上げ、息を吐きながら今度は一気に脱力させてダラーンと肩を落とした。この運動を10回ほど繰り返した。気休めだが、少しはリラックスができた。

もう一度今度は雑誌コーナーの逆の端、ドリンクコーナー側からブラインドを軽く開けて角度を変えながら、よく観察した。最前列のパトカーのアーチの後ろ側に私服警官が10名強、その後ろ、青バスの前に機動隊員が20名ほど整列している。透明の盾と、ヘルメットの後ろのガードパーツで新型制服だとわかった。新型の盾はトカレフの弾でも傷がつくくらいのダメージしか追わせられないポリカーボネイト製だ。他にもさまざまな防弾装備がなされている。厄介だ。まあSAT(特殊急襲部隊)は大阪か福岡からくるしかないし、高知に来ても、まずは奴らは同じ建物を再現し、シュミレーションする所から始める。第一高知県警のメンツにかけて最後まで出動要請をかけることはないだろう。それまでに私のゲームとショーは終わる。
黄色い帯の向こうには、TVカメラとレポーターがもう集まってきていた。野次馬を整理する制服警官の姿も見えた。
遠目にもはっきり見える特徴のロゴマークを大きなカメラに貼りつけたNHKのカメラマンとリポーターの顔をしっかりと頭に刻み込んだ

しかし、これほどの包囲網になるとは……一体あのOL共どんな110番したんだ。苦笑が漏れた。
今度もまた背をかがめ、ブラインド地帯を抜けるとまっすぐに立った。
「お前ら、立てるか?奥の店長が座ってる所に集合しろ」
男たちに冷たく言い放つと、男4人は足がしびれていたのかよろよろと立ち上がった
ジャージに向かって
「お前もだ」と言う。もう終わりか、とつまらなそうに私の後をついてきた
店長は乳製品の陳列棚にもたれて、胡坐をかいて座っていた
「お前らも座ってろ。正座はしなくていいぞ」
その私の言葉と、店長の態度に皆が不審がりながらも、そろそろと腰を下ろした
「店長、この店にTVは置いてあるか?」
私は店の配置を確認しながら聞いた
「ああ、あるぜ」
一同がその店長の物言いに目を見開く
「ここまで届くかな?」
「どうかな、アンテナ線次第だが……」
「やってみてくれ」
「ああ」
店長はカウンターの中に入っていった。
「そこにはなかっただろう?」
「いや、普段は布かけてある、ほれ」
カウンターの上にトンっと14型サイズの薄型TVを置いた
「本部のお偉いさんや、客に見つかるとアレだから、深夜の暇な時にちょいとな」
にやっと笑って、今度はカウンターの内側に体を潜らせて何やらゴゾゴゾとやっていた
「ああ、20M巻のアンテナ線がそのまま置いてあるわ。そこまでなら余裕だぜ」
「わかった。引っ張ってきてくれ。それからジャージ、お前は控室に折り畳みの椅子があるから2つ持ってきてくれ」
ジャージはうんうんとうなずくとあっという間に小走りで2つの椅子を持ってきた
「よし、そこに置いてくれ」
ジャージは乳製品コーナーの対面のパンの陳列棚に椅子をそっと並べたが、何やら不服そうだ
「なにか問題があるのか?」
ふくれっ面で首を横に振るジャージ
試しに「よくやったな」と口だけで褒めてみた。その途端、ジャージはにこやかな笑顔を取り戻し、鼻歌を歌いながら床に体育座りして、ベレッタで遊び始めた
「危ないから、振り回すな!」
弾も入って銃なのに、もっともらしく言う。
「は~い」
幼稚園児並みの反応だ

「ここに置くのか?」
店長の声に振り向くと、カウンターに潜り込んだせいか頭に白いほこりをかぶったままTVを抱えたまま立っていた
「……全くお前と言い、ジャージといい、子供みたいだな」
全く気付いてない店長の頭を、自分の頭に巻いたバンダナを外しパンパンとはたいてやった。
舞い上がった白い綿埃に、店長は「あ」とだけ言い照れたように頭を書いた
何なんだ、この茶番は。空気が緩みきっている。気を引き締めるために、バンダナを力強く締め直した。
折り畳み椅子を2つとも広げて全員が見えるようにカウンターの正反対、WC側に一つを置きTVをそこに置いた。もう一つは私が座るためにカウンター側に置いた。店長が差し出したリモコンを手に取って、チャンネルをザッピングしながらNHKにあわした。どの局もこのコンビニを映し出していた

「店長、電話もここに」
TV画面をじっと観察しながら、顔を向けずにそう言った。
「子機だが、いいか?」
「ああ」
間もなく店長が持ってきたのは、ナンバーディスプレイのものだった。ありがたい。
さっきサラリーマンの男にペットボトルの水を飲ませて、ボトルはカウンターに置いたままだった
右のヒップポケットが空いたままだったので、そこに子機を突っ込んだ

銀行でもない、信用金庫でも、サラ金でもない、そして郵便局でもない
何のために人質を取って籠城しているのか、警察は分かりかねて困惑しているだろう
OLたちはなぜ解放されたのか、バイトと店長の奥さん、普通は最後まで残すはずの女ばかりの解放
そしてOL達は私が自動小銃と拳銃を持っているのを見ている。足と腰に張り付けられたたくさんのマガジン(弾倉)。混乱したOL達は横並びにされコンビニ内にいた人数、私の装備、すべてがちぐはぐな意味不明な110番をしたに違いない。
警察は困惑しているだろう。でなければ接触もなしに機動隊の投入はあり得ないからだ。
だからこっちからは接触しない。サーモ(熱探知)でコンビニ内の人員を把握するにも、この炎天下。サーモは馬鹿になる。もしガラスに密着させたとしても、アイスクリームのコーナー、弁当のコーナー、文具のコーナーなどと様々な温度変化の一番奥に陣取った私たちは確認できやしない。

TVの画面を見た。さっき解放したバイトちゃんと奥さんを抱き留め保護した隊員は、いまは盾を片手に棒のように立って立哨しているだけだ。
視線を男たちに投げた
「じゃあそろそろ自己紹介の時間にしようか?」




つづ……けていいの?





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Response: コメント: 2  トラックバック: 0  Edit 07 20, 2011 Back to top
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Comment

ふむ、続けさせてしんぜよう

ところで犯人はダイナマイトや手榴弾は、持ってないの?

お母ニャンさま

は、はい。ありがとうございます。
犯人の装備は今まで出てきただけです
なんでか?資金がなかったからです!
非公開コメント(非公開にした場合、匿名性を尊重しレスしない事があります)

Plofile

灰音



name:灰音(ハイネ)

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