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夏の凶悪(7)

Category : 夏の凶悪
テーマ : 双極性障害(躁鬱病)
ジャンル : 心と身体
なり続ける電話を皆が見ていた
通話ボタンを押し、耳に当てた。相手は無言だった。
私も何もしゃべらずTV画面の刑事に注目していた。Yシャツを肘までまくり上げ日焼けした精悍な顔立ちだった。一昔前の二人組の刑事が暴れまわるTVの片一方のように頭はポマードでリーゼントを崩したスタイルで決めている。
「……もしもし」
受話器から声が聞こえるのと同時に、TV画面の刑事の口がパクパク動いた。やはりこいつがネゴシエイター(交渉人)か。
受話器から耳を離すと、通話を切った。
即、電話が鳴った。しばらく焦らしてから通話ボタンを押した
「もしもし、きこえるか?私は高知県警のものだ」
「名前と階級は?」
「安藤だ。階級は警部。次はお前の番だ」
「名乗るバカがいると思うか?」
「……」
「冗談だよ。ちょっと待ってろ。」
受話器をふさぐとリストラを呼びつけて、腰のホルスターからベレッタを抜き、雑誌の並ぶブラインドに近寄った。
まだ狙撃手は配置されてないだろう。しかし、もしいれば駅ビルや青バスの中から確実に撃たれるスペースだ。
「店長!」
「なんだ?」
店長が足早に近寄ってきた。合図でブラインドを上げて、合図で下げるよう言った
「わかった」
そう言うと店長はブラインドのひもを手繰り寄せ、雑誌コーナーにしゃがみ込んだ
やけに手馴れてやしないか?しゃがむことまで指示してないのに、自らしゃがみ込んだ?
まあいい。考えすぎはよくない。バンダナをほどき、髪をまとめて後ろで括った。
「よし店長、いいぞ。上げてくれ」
ブラインドがザーッとあがっていき頭の上30cm位のところで止めさした。
「おい、見えるか?」
リストラのこめかみに銃口を当て、前へ突きだし盾にした。横から顔だけを出す
「私の顔が見えるよな?」
「ああ」
「私の生年月日は○年○月○日、現住所は高知市○○町○ー○、本名 月島灰音だ。メモしたか?」
「ああ」
「写真も撮ったな?」
「ああ」
「よし」
店長に視線を送った。店長は頷き、ブラインドのひもを手放した。一気にブラインドが滑り落ちてきた。リストラに当てていた銃口を離す
「第一の要求を言うぞ。さっきの情報の裏が取れたら、マスコミにすべて流せ」
「それが終わったら、柏田病院の田川医師を呼び出せ」
それだけ言うと、電話を切った
2人を連れて、一番奥の陳列棚まで戻った。
これからは時間との勝負だ。急いで工具箱からマイナスドライバーとペンチを取り出し、ジッポオイルの封を切ろうとするが、手が震えてうまくいかない。イライラがつのる
すっと横から店長がマイナスドライバーとジッポオイルの缶を取り上げると、ものの見事に開けてしまった
そうすると矢口が、チームワークよろしく空にしたオロナミンCの瓶にオイルを3/4ほどそそいで、さっき私が切り裂いたタオルのひもを詰めて栓をしていく。
「何で火炎瓶を作ると分かった?」
いぶかしげに矢口と店長を見た。
矢口はにやりと笑うと
「ビン、オイル、切り裂いた布。他に何を作る?なあ店長」
店長はうんうんと頷いている。
私は肩を落とし溜息をついた。困った人質だ……。
オロナミンCは5本しか持ってこなかったので、作業はすぐ終わった
「どうする?あと3本くらいなら作れるぜ。オイルが余ってる」
店長がこっちを仰ぎ見た。
「あ、ああ、頼む」
店長はいそいそとドリンクコーナーからオロナミンCを持ってきた
「あんたも飲んどくかい?」
そういって投げられた瓶を思わず反射的に受け取ってしまった。店長と矢口がゴクゴクと飲み干している
私はリスパダールの封を切って、ジュッと喉に流し込むと、苦さをごまかすためにオロナミンCで流し込んだ。
店長に空き瓶を渡す。
作業に取り掛かりながら店長がいきなり聞いてきた
「あんた、どっか悪いのかい?」
やっぱりこの店長只者じゃない
「ああ、ちょっとな。ところで店長、あんた昔なにやってた?カタギのまっとうな人間には見えないが?」
店長は最後のオイル缶を開けて、矢口に渡すとコンビニの前掛けのポケットから煙草を取り出すと火をつけ大きく一服した。
「あんた、全共闘って知ってるかね?」
おもむろに口を開いた。名前だけは知っている。まだ私が生まれる前の話だ。
「安田講堂とか、学生運動とかな。俺、いやワシは当時東京の大学に通っていてなあ。左翼思想にかぶれて、この矢口さんの先輩なんかを相手に派手にドンパチしたもんさ。投石は当たり前、ゲバ棒って後で呼ばれる角材でなぐりあったり、こうやってほら、火炎瓶なんかも普通に使ってたなあ。最後は爆弾まで作ってくるやつがいて……安田講堂でワシ達は負けて、その後のドロドロの内ゲバが嫌になって、高知に避難してきたんだけどな。」
「なるほどな」
「だから、こうやってポリ公に囲まれると、当時の血がうずいちまって、ははは」
照れくさそうに店長は頭をポンッと叩くとまた煙草を吸いだした
オイルの仕分けも済んでタオルの切れ端で封をし終わった矢口に声をかけた
「よかったな、矢口さん。あんた現役だったら店長に燃やされてるよ?」
「まったくだ、世の中見た目じゃわからんな」
矢口も肩をすくめて困った顔をしている。肩をすくめるポーズが癖なのだろう

今の時間を利用して情報収集だ
「店長、確かその学生運動のとき機動隊はガス銃を水平打ちしたよな?」
「ああ」
「あれで表に面したガラス壁、割れるかな?」
「いや、人間には堪えるがこのチェーンのコンビニに使われるガラスは大丈夫だ。ガス銃に使われる弾頭はすぐ割れるように柔らかく作ってあるからな」
「そうか、ありがとう。じゃあ矢口さん」
「ん?」
「機動隊のスタングレネード、音と光で自由を奪う手榴弾。あれってダンボールで出来てるのは本当か?」
「ああ、本当だ。手榴弾てのは、爆発より爆薬を囲う外殻の金属が飛び散って相手に刺さってダメージを与えるのが本当の使い方なんだ。だから飛散しやすいように、外側はボコボコに溝が切ってあるだろう?ただの制圧目的のスタングレネードで殺傷しては困るから、特殊なダンボールで作ってあるんだ。」
「なるほどな。つまりこの店に穴が開かない限りはスタングレネードは使えないってことだな」
「まあ、そうなるな。」
「ありがとう。最後にトヨタ」
「あ、はい」
牛乳を飲んでたトヨタが急いで佇まいを正す
「前にスカパーのディスカバリーチャンネルで見たんだが、車の燃料タンクを銃で撃っても映画やTVみたいに爆発しないというのは、本当か?」
「ああ、あれなら僕も見ました。びっくりなんですが、本当なんですよ。走ってる車に対しても同じことで、爆発は起きません。」
「そうか。よくわかった。」

必要な情報は出そろった。火炎瓶と化したオロナミンCの瓶を私、リストラ、カッパの3人で持って裏口手前に3本、入り口の自動ドア脇に5本置き、逆側にAKの2連マガジンを3つ重ねて置いた。
奥へ戻りかけた時、ヒップポケットの電話が鳴った。
鳴らしっぱなしで奥に戻り、椅子に腰かけた。全員がこっちを見ている。TVをみた。さっき「安藤」と名乗った刑事が携帯を手にしていた
電話を手に取り通話ボタンを押した
「……」
「もしもし」
いつも根負けして先に喋りだすのは安藤刑事のほうだ。






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Response: コメント: 4  トラックバック: 0  Edit 07 21, 2011 Back to top
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Comment

お別れすることと、夏の凶悪シリーズが完結することとは、無関係だからね
ちゃんと、完結させるんだよ、ここまできたんだからね

お母ニャンさま

ご心配をおかけしています。
7/22の記事の通り、お別れはとりあえず回避できました
夏の凶悪シリーズ、頑張って書きますね^^

そうだ!!
犯人の目的は、自分の音楽をライブで、全国放送することだ!

お母ニャンさま

ふふふ、お母ニャンの推理を見てるとこっちまで楽しくなっちゃうなあ。何時も頂くコメントに励まされています。
でも月島(犯人)は楽器も持っていないし、ビデオもDVDも所持していないですよ~。さて、どうなるんでしょうねえ^^
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