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中学生活3

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その日はヒロユキさんちでシャワーを借りた
「お風呂お先にいただきますー」
ヒロユキママに声をかけると「あ、待って待って」と、やたら可愛らしいクマの柄のパジャマとバスタオルを渡された
「洗濯しといたげるから、制服のシャツと下着洗濯機に入れといてね」
無邪気に笑うヒロユキママは、なんでか楽しそうだった

ヒロユキさんの小っちゃい時のパジャマかなと思って、クマ柄のパジャマを着たごついヒロユキさんを想像して笑ってしまった
お風呂上りにパジャマにそでを通すと、かなり小柄だった僕にもちょっと寸足らずのような感じだった
でも血で汚れた制服にもう一回袖を通すのはなんか嫌だったし我慢して着て、シャツと下着を洗濯機に入れて、ちょっと悩んだけどさすがに恥ずかしくてパンツはそのまんま履いた
髪をバスタオルでごしごし乾かしながら、台所に行って
「お風呂頂きました。気持ち良かったです」
とペコっと頭を下げるとヒロユキママは、パジャマを着たボクを見てパッと顔を輝かすと
「よく似合うね、そのパジャマ。でもちょっと小さかったかな?ごめんね」
そういったかと思うと、バスタオルを取り上げてゴシゴシ僕の髪を乾かし始めた
あっけにとられていると「ん~♪ん~♪」と鼻歌を歌い始めた
そんなことされるのは初めてだったので、どうしていいかもわからなくて
邪険に振り払うわけにもいかず、そのまま突っ立っていた

晩御飯も、と勧められたけど口の中が切れて痛かったので遠慮させてもらった
「よっし乾いた。ヒロユキの部屋にお布団敷いてあるから、そこで寝てね」
まだ髪の毛は生乾きだったけど、「ありがとうございます」とだけ言ってヒロユキさんの部屋に戻った

部屋に戻ると布団が並べて敷いてあった
一人っ子で生まれて、物心がついてからはいつも一人で寝ていたし
修学旅行も自主的に参加を断ったので、誰かと布団を並べて寝るのは初めての事だった

枕が変わると眠れないというのは本当のようで殴られた痛みもあったし
今日起きた事の全部が全部初めてのことだらけだったので全然眠れなかった
晩御飯とお風呂を済ませたらしいヒロユキさんが部屋に入ってきた
急いで目を閉じて寝てるふりをした
なんかお風呂上がりのいい匂いがして、ドキドキした
唐突に隣からヒロユキさんが声をかけてきた

「ヒカル、起きてんのか?」
「…うん」
「お前も空手やらない?」
「え、ヒロユキさんやってんの?」
「うん。小学校の時からやってんぞ。一応黒帯だぞ。」
「すごいじゃん!でも、なんで僕が空手なんか?」
「お前喧嘩弱いじゃん」

クックックという笑い声も聞こえてきて、僕は顔が真っ赤になった
めちゃくちゃ恥ずかしかい思いでいっぱいだった

「でも、空手かぁ…痛いんでしょ?」
「うん、そりゃまあ痛い」
「じゃあいやだなぁ。なんか他のはない?」
「うーん。なにがいいんだろうな」
「ヒロユキさんがボディーガードしてくれたらいいじゃん」
「…アホか。いっつもついてらんないだろうが。それに俺先に卒業しちゃうんだぞ?」
「あ、そうかー」
「剣道はどうよ?あれだったら防具つけるしあんまり痛くないんじゃないか?」
「あ、それいいかもしれない。近所に道場あるし!」
「親に頼んでみろよ、ヒカル身体小っちゃいし空手よりは向いてるかもな」
「部活の剣道はどうなんだろ?」
「やめとけやめとけ、使いっ走りとしごかれるだけで1年終わるぞ」
「そうかぁ」
「なんかやっとかないと、今日みたいになるぞ」
「…うん」

夜出かけるうまい口実にもなるし、と心の中ではまさにグッドアイデアと叫んでいた
あとはヒロユキさんが、学校の勢力地図なんかを説明してくれてたんだけど
疲れと、お風呂の気持ちよさでヒロユキさんの声を聴いてるうちにうとうとしてきて
知らず知らずのうちに寝ていたようで、次の日は階下の工場の機械の動く音で目が覚めた

時計を見ると10時をとっくにまわって、ヒロユキさんの姿はなかった
着替えるものもなかったのでパジャマのまま昨日より痛くなった体で、大きな音のする工場に降りていった

中ではバンダナを巻いたヒロユキさんのお父さんがサングラス(?)をかけて溶接をしていた
僕はスーツとネクタイで会社に出かけるのが普通のお父さんだと、思い込んでいたから
世の中の「お父さん」とはかけ離れたその姿にびっくりしてしばらく見入っていた


ヒロユキパパは僕に気づくと作業の手を止めて僕のそばに来た
「お、おはようございます」
おっかなびっくり挨拶をした
「おう。よく眠れたみたいじゃないか」
そういいながらポケットからジャリ銭をだすと渋い声で言った
「あそこの自販でコーヒー買ってきてくれよ、休憩するぞ」
「あ、はい」
「お前の分も買ってこいよ」
「あ、ありがとうございます」
身体は打ち身でまだ悲鳴を上げていたけど、何とか歩いて買ってくることができた
「はい、どうぞ」
つり銭と一緒にコーヒーを渡した
「おう。だいぶやられたみたいだな。」
僕の顔を見てニカッと笑いました
「…」
また恥ずかしくなってうつむいてしまった

「お、おじさんはなにやってるんですか?」
「おい、おじさん言うな。まだ34歳だぞ。ヒロキさんと呼べ、ヒロキさんと。」

ヒロキにヒロユキ…単純…
そっか二十歳の時の子なんだ…
ヒロユキさんの新しい一面を知った思いだった



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中学生活 4

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「俺はな、ここでバイクの修理したり、捨ててある壊れたバイク拾ってきて直して売ってんだよ」

すごくおいしそうに煙草をすいながらヒロキさんは言った
サラリーマン以外の肉体労働をしている人を間近で見るのは初めてだったのですごくドキドキした
工場に散らばる工具や、直しかけのバイクもなんだか格好良かった

缶コーヒーのプルトップを開けて一口飲みながら聞かれた

「お前、名前はなんていうんだよ?」
「ヒカル…です」
「んん?本名か、それ?まあどうでもいいか」

「ヒカル、学校おもしろいか?」
僕は首を横に振りました

「そうかー。でもあれだぞ。面白くないのは、誰のせいでもないんだぞ?」
「???」
「面白くするも、つまらなくするのもヒカル、結局お前自身っていうことだよ」

ヒロキさんの言うことはさっぱりわからなかったし
僕自身がおもしろくする?意味が分かんなかった

「まだヒカルには分かんないか。まあ、そのうちわかるさ」

飲み終わったコーヒーの缶を工場のクズ篭にシュートすると
僕の反応を伺いもせずに、またヒロキさんは仕事に戻った

コーヒーを飲み終わるともうすることのなくなった僕は
うろうろと興味深々で、工場内の探索を始めた
メカニカルな機械類はすごく魅力的に見えた

「機械にはさわるなよーー!!」

機械の音に負けないよう大声でヒロキさんが叫んでいたので、僕は両手で○を作って了解の意志を示した
仕事の邪魔をしてはいけないと思い、ヒロユキさんちの自宅周りを散策してみた

2階にあがる外階段のもとにポストがあって

○○弘樹
  里美
  弘幸
  裕子

かすれかかったマジックペンの文字でそう書いてあった
そうか、ヒロユキママは里見さんっていうのか

裕子?妹さんかな?でも見たこともないなあとおもいつつ
2Fに上がってヒロユキさんの部屋に戻った
やっぱり全身筋肉痛のの僕は急にまたしんどくなって、ボケーっとしながら
(ん~~剣道か~…)
昨夜のヒロユキさんとの話を思い出していた

ふと壁を見るとヒロユキさんの空手の表彰状が飾ってあった
笑ってメダルを誇らしげに手にしている写真も。

ヒロユキさんって強いんだ~~
感心しながら部屋中をみまわすと、写真立てに家族写真があったので
勝手に触っちゃ悪いかなあと思いつつも好奇心に負けて
どれどれっとてにして見てみると若い夫婦の間に小学生らしきヒロユキさんと
身長のそれほど変わらない女の子が映っていた

あーこの子が裕子ちゃんか。ひとしきり納得して写真立てを元の所に戻した
暇だな~と思ってゴロンと横になって、窓から見える青空を見てまたボケーっとしていた


コンコンッとノックする音でふと我に返った
やっぱり昨日の痛みと全身疲労でいつの間にやら眠っていたみたいだった

「はいー」
「あ、ヒロユキのお母さんです。入っていいかしら?」

自分の家なのに断る必要ないだろうに、とおもいつつ
起き上がると居住まいを正して、まだ覚醒してない頭で
「どうぞー」と応えた

里美さんは僕の前にきちんと正座をして一呼吸おいて
昨日とは打って変わって真剣な表情で口を開いた



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中学生活5

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「あのね、ヒカルちゃん、お願いがあるのよ」

あ、この人名前知ってたんだ。。。でも「ちゃん」って。。。

昨日とは打って変わって真剣な表情の里見さんに気づいて
僕も居住まいを正した

「は、はい。なんですか?」
「もうすぐ夏休みが来るでしょう?」
「まだ5月ですけど、もうすぐといえば、もうすぐですね…」
「昨日ね、恭子ちゃんと弘幸に色々話を聞いたの」
「は、はあ」
「夏休みの間だけでもウチの子にならない?」
「え、えぇ!?」
「ヒカルちゃん、その…言いにくいんだけど、ご両親に大切にされてないっていうか…その…」
「暴力ですか?」
「うん、正しくは虐待っていうんだけど、受けてるよね?」
「ま、まあ…小さいころからだからあまり気にしてなかったけど、しつけ?かと。。。」
「ううん、それは違うのよ。話からして立派な児童虐待なの。」

恭子さんもヒロユキさんも何を話したんだろう
ウチの秘密がばれたらまた父親に殴られるのに…

「きちんとした話し合いには私たち夫婦がいくし、ヒカルちゃんはその場にいなくていいから」

ヒロユキママ、里美さんの暴走は止まらない

しばらく頭がこんがらがっていた僕はふと気が付いたことを聞いてみた

「あの…裕子ちゃんっていうのは?同い年ぐらいの男子がいたら嫌がりませんか?」
「え…弘幸から何も聞いてないの?」
「あ、はい。何にも。今日表札見て知ったぐらいで」
「そうかぁ…」

里美さんはしばらくうつむいてウンウンと自分で何かを納得したかのように口を開いた

「裕子はね、小学校5年の時に川で遊んでて溺れちゃったのよ…」
「え…」
「弘幸とは本当に仲良くってね、一緒に泳ぎに行って弘幸が目を離したすきいなくなってしまって、見つけた時にはもう…」

冗談だろ?そんなドラマみたいな話ないじゃん?

あんたら家族全然普通に暮らしてるじゃん

ヒロユキさんだって一回も裕子ちゃんの事しゃべったことないし

「なーんちゃって」と里美さんがペロっと舌を出すのをまってたけれど
里美さんの視線は畳の目を見たまま動かなかった

部屋中が重い空気に包まれてしまった

今なら「そうですか、それはお気の毒に」などといえるのだけど
その時の僕は口がカラカラに乾いて何も言えなかった

「ごめんなさい…」

僕の口からはその言葉がなぜか出てた
同時に涙がボロボロあふれてきて止まらなかった

自分のうかつさに泣けたのか
ヒロユキさんの家庭の事情に泣いたのか
全然わからなかったけどとにかく泣いた

突然里美さんが僕を力強く抱きしめた

「ヒカルちゃんは泣かなくていいの。お願い、泣かないで。本当に優しい子ね。」

里美さんの声も涙でくぐもっていた



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中学生活6

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弘樹さんと里見さん夫婦とうちの両親の話し合いは
意外とすんなりと話し合いは解決したようだった

それも夏休み前のゴールデンウィークからヒロユキさんちに厄介になることになった

普段から留守がちだった僕のこと
早朝から深夜まで両親が不在なこと
また世間体を異常なまでに気にする父親が「児童虐待」という
問題を突かれて、黙り込んでしまったことが決め手になったみたいだった

家を出る日、僕は一通りの着替えと、事前にヒロユキさんと一緒に出向いてもらってきた、剣道場の入会状に保護者印を押してもらった書類
そして生活費の5万円をもらって家をでた
迎えには弘樹さんが車で来てくれてた

「もう○○さんちの子供になったらどうだ?お前がいなくなって清々する」

父親が僕を送り出す時に言った言葉だ
母親は父親の言いなり、僕のほうを見ていても目には映っていないようだった
弘樹さんはそれを聞いても無視して、僕のカバンを持ってくれると肩をポンポンと叩いて振り向かずにエレベーターに向かって歩き出した

僕も振り向くことも「行ってきます」も言わず弘樹さんの後を追った


ヒロユキさんの家に着くと、一部屋をあてがわれた

裕子ちゃんの部屋だった
裕子ちゃんが亡くなってそのままにしてあったという部屋は
小学生の部屋らしくぬいぐるみやファンシーグッズがかざられて
勉強机にも小学校の教科書が並べられたままだった


なんだかすごく居心地が悪くて、汚しちゃいけないような気がして
ヒロユキさんと里美さんに頼み込んで
ヒロユキさんと同じ部屋に住ませてもらうことにした

里美さんが便所やお風呂の位置とかを教えてくれた
台所にもつれていってくれて冷蔵庫に入ってるものは、何でも飲み食いしていいよ、と言ってくれた

それより僕はヒロユキさんと、また枕を並べて一緒の部屋で寝られることが嬉しかった

不思議な気持ち

同級生の女の子を見ても、可愛いなあ、綺麗だなあと思う事はあっても付き合いたいとかは思ったことなかったし、むしろ小学校から女装し、中学校でもセーラー服登校をした僕には「ああなりたい」という願望の方が強かった

ヒロユキさんには絶対の安心感があった
その隣で寝られるのは、自分が本当の女の子になったような感じでドキドキした

その日の晩、簡単な歓迎会を里見さんがしてくれた
あれも、これも、とボクの隣に来て小皿に料理を取ってくれ、僕の目を見ては
「おいしい?いっぱい食べてね」
と、もう満腹になった僕に、まだ料理を進めてきてくれた

その様子を弘樹さんとヒロユキさんがニコニコしながら見ていた


歓迎会が終わって、弘樹さんとヒロユキさんは自室に帰って行ったので
僕は里見さんと洗い物や片づけをした
キッチンに並んで2人で洗い物をしてると
「私たち、本当の親子みたいね。来てくれてよかった、ヒカルちゃん」
里見さんは鼻歌を歌いながらお尻を僕のお尻にぶつけてきた
おかしくなって僕も力加減をしながら里見さんのお尻に自分のお尻をぶつけた
二人で大笑いになった

洗い物も終わって、おやすみなさいを言うと僕はヒロユキの部屋に戻った

やった。布団が二つくっ付けてしいてある

「ちっと狭いけど、我慢しろよ?それから布団は自分の分は自分でしけよ」
ヒロユキさんは寝転がってバイクの本を読んでいた
「うんうん。ヒロユキさんもバイク好きなんだ?」
「おー。オヤジの影響かな。今、ジャンク屋でバイク見つけて下の工場で直してる」
「え?ヒロユキさん用の?」
「そうにきまってんだろ」
といいながら本から視線をずらして僕を見るとニヤッと笑った

僕はヒロユキさんの寝そべってる布団の横にドサっとたおれると
「どれ?どのバイク?この本に載ってるの?」
一瞬ヒロユキさんはビクッと体を強張らせましたが、すぐに本を僕にも見えるように真ん中に持ってきてくれた

その夜は4月だというのにまだ肌寒く、途中で一回トイレに起きた僕は
部屋に戻るとスースー寝息を立てているヒロユキさんの布団にこっそり忍び込んだ

(暖かい~~~♪)
心の中で幸せいっぱいの温もりに包まれながらウトウトしながら2度寝の態勢に入ったとき
グイっと首の下に大きな腕が入ってきました、腕枕でした
寝ぼけてんのかな?と思ってそーっとヒロユキさんを見たけど、思いっきり寝てるみたいだった
腕枕なんてされたの初めてだったので、頭をどの角度に持って行っていいのかわからなかったけど、なんとか安定したポジションを発見してそのまんま寝入ってしまった

そうしてヒロユキさんの家での初日は過ぎて行ったのでした



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中学生活7

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次の日、ヒロユキさんの「うわあっ!!」という声で目が覚めました
「んん?」と思って気が付くと僕は抱き枕のようにヒロユキさんにしがみついて寝てたみたいでした
ごつい抱き枕…
「ご、ごめん」
そう言ってぱっと離れましたが、よく考えるとヒロユキさんもボクを腕枕して足まで乗っけてたような…

なんとなく気まずい雰囲気が流れながらも、お互いに布団をたたむと制服に着替えました

学校のほうは相変わらずセーラー服登校が続いていましたが、その日は弘樹さんの家から初めての登校だったし、放課後剣道教室に申込みに行く予定だったので久しぶりの学ランでした

里見さんの用意してくれた朝食を食べ終わった頃には、もう寝起きの気まずさは無くなってました
ヒロユキさんの家は、僕の家よりも学校に近かったので二人並んでのんびり登校することができました

ヒロユキさんと一緒に登校してることや、一年グループとのタイマンで、表立ってのいじめはありませんでしたが、いつのまにやら上履きがなくなってたり、机の落書きは「オカマ注意!!」とか、もう机全面カッターや彫刻刀で掘り込まれて無事なところが少ないくらいだったけど、全然気になりませんでした

放課後になって、剣道教室に向かいました。学校から剣道場までは歩いて10分かかりませんでした
昼から開けては居るけど、教室は夜からということでした
一か月3千円の月謝だと道場主さんが言いました
防具は貸出できるけど、上着と袴は買わなければならいと言われましたが、お金がないことを説明すると、道場主さんは困った顔をしながらも、更衣室の一角に積まれた段ボールをゴソゴソ物色しながら一揃いの防具と上着、袴を見繕って探し出してくれました

「ちょっと大きいけど、君ぐらいの年代の子はすぐ成長するからこれでいいだろ」
そういいながら防具のつけ方から教えてくれました
防具一式をつけるだけでフラフラになるくらい重かったし
特に面はつけるだけで、息苦しくなって視界も悪いし最悪でした

「ま、最初は素振りからだね」
その様子を見ていた道場主さんが笑いながら言いました
篭手をはずすと異常な臭気が鼻を突きました
「先生、くさいよ、これ」
僕は耐えきれずに訴えました
先生はさらに大笑いになりました
「そんなもんだよ、新品だってすぐ臭くなっちゃう。あ、シャワールームはあそこ」
と指さしてくれました。赤いぽっちのある水栓もあったのでお湯も出そうでした

「早速今晩からくるかい?」
「はい。」
「じゃあ6時にまたきなさい」
「はい。」
「それから、道場に入るときは『よろしくおねがいします』出るときは『ありがとうございました』
って挨拶すること。だれもいなくてもね。これは決まり事だから守るように」
「はい。」

道場を出ると屋外にあった手洗い場で石鹸をつけて必死で手を洗いました
臭いがいつまでも鼻に残っているようで気持ちが悪かったのですが
いつまでも洗っているわけにもいかず、適当なところで切り上げると

5月の気持ちいい風を受けながら、またプラプラと弘樹さんちに帰ると、弘樹さんと里美さんに
道場に通うことになった、と伝えました

それが弘樹さん一家との奇妙な共同生活の初日でした

飛び石連休じゃなくって、まとまったG.W.ならいっぱいヒロユキさんと遊べるのになあという気持ちでいっぱいでした



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目覚め

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自宅から着替えは一応のものを持ってきていたのだけど、下着以外は無駄になりました

しっかりと次の日には恭子さんが自分のお古だから、と言って服を山盛り持ってきてくれたからでした
全部女の子のものでした

里美さんは大喜びで着せ替え人形のように何回も試着させては、手を叩いてよろこんでいました

小学校の頃、母の服を着て遊びに出かけていた頃、母は30歳でしたから服のセンスはおばちゃんファッションとはいかないまでも、「大人」の服でしたので、恭子さんの持ってきてくれた服は同世代の女の子のものですごく嬉しかったです

あれやこれやとコーディネートを考えて、僕に着させては「博之、どう?かわいいよねこれ」と聞く里見さんに、ヒロユキさんはやれやれといった顔で相変わらずのサムアップのサインをしてくれていました

(その頃には小学校5年からのばしていた髪がもう肩をとっくに越す長さだったので
童顔も重なって、男の子物の私服を着ていても女の子とよく間違われました
女の子に見られる事が嬉しかったし、僕自身は身長も145cmから伸びないし、声変わりもしないし、「毛」も生えてこないし、同級生たちがどんどん大人びていくのが羨ましかったんだけど、この時点でまだこれから胸が出て来て、忌まわしいおちんちんは消えて女性器が形成されると本気で信じてました)

里見さんに強制的に仕事を中断させられて、女の子になった僕を観に2Fに上がってきた弘樹さんも「おう、これは似合うな!」と笑顔で目を細める始末でした

たぶんだけど、里見さんも弘樹さんも、裕子ちゃんと僕を重ねていたんだと思います
絶対口にはださなかったけどね

学校のほうは相変わらずセーラー服登校が続いていました

クラスの女子とは普通に仲良く話したり遊んだりしていました
後ろの席の女子が授業中僕の髪を引っ張って何やらやっているので
「なにやってんの」と手をつかんだけど
「あ、動かないで!」と言われそのままにしておいたら、三つ編みにされていました
休み時間に鏡を見たらさすがに気持ち悪かったのでほどいてもらったけど…

サノのおかげでクラスではもう普通に「ヒカル」と呼ばれていました
「おいーヒカル、こっち来てこれ見てみろよ」
サノの1年生グループはあの一件以来、普通にしゃべりかけてきたり接してくれて
上履きをどこかに捨てたり、机の「オカマ」と掘り込んでるやつらとは違うようでした

男子たちが輪を作って見てたのはちょとハードな内容のエロ本でした
「あ~~こういう女とやってみたいよな~」
ん~?っと覗くと、結合分は墨でべた塗りしてある(当時はアンダーヘアーの露出もだめで、モザイクもだめでした)綺麗な外人女優さんと男優さんのファックシーンでした

僕の目は、そのページに釘づけになってドキドキが止まりませんでした
「おいおい、ヒカル、みみまで真っ赤になってるぞ」
「やっぱ女の格好してても、こういうの好きかあ!」
周りのクラスメートが肘で僕をつつきながら冷やかしました

でも、僕が興奮していたのは同級生達のように「いい女としてみたい」からではなく、「その女優さんのようになって、逞しい男の人に抱かれたい」という願望からでした



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春の終わり

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通い始めた剣道教室は面白いものでした
日にちを追うごとに上達していくのが分かってきて
手にはまめができて、足の裏には水ぶくれができて
痛くて仕方なかったけど模型の人形に面や篭手がパシンと決まると
すごく気持ちよく感じられました
最初はフラフラとした軌道でポコっとしかあたらなかったものが
まっすぐな軌道を描いてピシッと目標を捉えるようになるのに、そんなに時間はかかりませんでした
そのうち単独練習ではなくて、皆に交じって練習するようになりました
肉の入った目標に打ち込むのはもっと快感でした
もちろん相手にも打たすから篭手とか打たれると青あざができるくらい痛かったけど、その痛みもまた快感でした

大丈夫だと言っているのに、教室が終わるころにはヒロユキさんが
道場の入口で待っていて、一緒に帰るようになっていました
竹刀だって持っているから一人でも大丈夫だといっても必ず迎えに来てくれるのでした

僕はヒロユキさんに汗臭いのを匂われるのが嫌なのと、どうしても人の家のお風呂になじめなかったので
いつもヒロユキさんを待たせて道場のシャワーで本格的に体を洗いシャンプーまでして帰っていました
いつのまにか道場の電気を消すのは、一番最後に道場を出る僕の役目になっていました

ヒロユキさんも僕を裕子ちゃんと重ねて見ていて
きっと心配なんだろうなあと思い、最初に2回ぐらい文句を言った後はもう何も言いませんでした

シャワーで濡れた髪を乾かしながら、二人で夜風に吹かれながら帰るのも気持ちよかったし。

季節は6月を過ぎ、7月目前。もうすぐ夏休みを迎えようとしていました
学校の教科書は、漫画やバイク関係以外の雑誌を置いてないヒロユキさんの部屋で退屈しのぎにほとんど全部読んでいたし
小さい頃から弘樹さんのバイク修理を手伝ってたからか、ヒロユキさんは不良の癖に(?)妙に理数系が得意だったので、わからないところがあれば聞けばほとんど教えてくれてたので期末試験の対策はばっちりでした

僕もその頃になると、バイクの写真を見て川崎とかヤマハとかぐらいはわかるようになっていました
並べて敷いた布団の真ん中でバイク雑誌を拡げてはあれやこれやとキャイキャイやってると
決まって里見さんが入ってきて「あんたたち本当の兄妹みたいねえ」と言って「早く寝なさい」とでていくのでした
その途端ヒロユキさんは雑誌を片隅に追いやり布団をかぶって寝た真似をするので、部屋の電気を消すのはいつも僕でした

いつの間にかヒロユキさんに腕枕をされて胸に顔をうずめて寝るのが普通になっていました
やっぱり安心感はあったけど、段々と本当にゆっくりと、もやもやとした「好きかも…」という感情に僕の中で変わっていきました
男の人と女の人が好き同士になることが「普通」なのであって、男と男が好きになることは「ホモ」って言うんだってことは中1の性知識でもわかってました
なんで僕、男に生まれちゃったんだろう。
学ラン着てるときだって違和感たっぷりだし、女の子の服を着て里見さんや弘樹さんに女の子として扱ってもらってる時はすごく幸せなのに…
それでもヒロユキさんへの想いは募っていくばかりでした



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夏休み1

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校長先生の退屈な訓話が終わって大掃除をおえると、夏休みの始まりでした

「働かざる者食うべからず」

との弘樹さんの言葉で僕とヒロユキさんは午前中は弘樹さんの工場を手伝いました

ヒロユキさんはもう慣れたものでテキパキと仕事をしていたけど
僕はドライバーやレンチを使うのも初めてだったので、ボルトの角やネジの山をなめてしまい、怒られっぱなしでした
ヒロユキさんは自分のバイクを組み立ててるようでした
弘樹さんとエンジンをいじってる姿がすごく様になって恰好よくて
なぜかボーっとヒロユキさんを見ている時間が長くなりました

結局僕の仕事は工場の掃除、整理整頓、使いっ走りになってしまいました
あとは里美さんを手伝って2Fの掃除とか洗濯物をして、余った時間はヒロユキさんの観察をしていました
目が合うと照れくさくなって視線を外すのですが、やっぱり気になってまた見てしまうのでした


午後からは好きにしていいと言われたけど、ヒロユキさんはバイク作りに熱中してるし
恭子さんは、中学卒業したら愛媛の全寮制の美容学校に行くらしくって、勉強に忙しいらしくて取り合ってくれませんでした
ヒロユキさんと恭子さんは付き合っていると思ってたけど、どうも違うみたいでした

しょうがないのでブラブラと剣道場に行って、看板の裏にある合鍵で中に入ると
昼間の誰もまだ来てない道場を雑巾がけして、木刀で飽きるまで素振りしてまた雑巾がけするのが日課になりました
道場から実家までは目と鼻の先だったけど、帰る気は全く起きませんでした

そんな生活が続き、あっという間に7月は終わり8月も中旬になっていました

その日もいつものように午前の日課をこなしてから道場に行き雑巾がけをしていると、人の気配がしました
まだ生徒さんの来る時間じゃないのにな、と思い視線を向けるとヒロユキさんが缶ジュースを持って立っていました
僕は雑巾をバケツに戻すと手を洗ってヒロユキさんと道場の片隅に座りました
なんか普段でも隣同士で布団を敷いて寝てるのに
誰もいない道場で二人きりになったことはなかったしドキドキしました

「ヒカル、お前一人でいっつもこんなことしてんの?」
「だってヒロユキさん遊んでくれないでしょ」
「…おう。俺さ、卒業したら親父の工場手伝うつもりだしな」
「あ、そうなんだ。それで今は修行中なかんじ?」
「まあな。ヒカルは卒業したらどうすんだよ?」

そんなこと中一の僕に聞かれてもわかるわけない
「わかんない。親は多分、高校行けっていうと思う」
「そうか…」
「うん…」

突然何か思い出したかのようにヒロユキさんは立ち上がって言いました
「この間から作ってたバイク、ようやくできたぞ」
「え?ほんとに?」
「おう。乗ってみるか?」
「乗る!!!絶対乗る!!」

速攻で道場の片づけをしてサッサと歩いていくヒロユキさんをおっかけました



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夏休み 告白1

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ヒロユキさんのバイクは道場の前に停めてありました

「なんかオッサンみたいなバイクやね」
思わずそう言ってしまいました

ぎろっと僕をにらむとヒロユキさんは
「まだこの渋さがわからんうちはガキってことよや」

ふん、一個しか歳違わないのに。弘樹さんの真似か!

HONDAのCB350
僕はまだこのバイクの素晴らしさを全く知りませんでした
ヒロユキさんはシートにまたがるとキック一発でエンジンを始動しました
とたんに脈拍みたいなすごいエンジン音

「後ろ乗れよ」
「うんうん!」
でもなんかズリこけそう…
「ちゃんと俺の腰に腕まわしてつかまっとけよ!」

エンジン音がうるさいので声も自然と大きくなります
しっかりとヒロユキさんの腰にしがみつきました

え?

なんか腰回りとかおっきい。一個違いなのに全然僕と違う

ガチャっというギアを踏む音がしてバイクは走り出しました
すごい!!小学校の時パクッた原チャリとは比べ物にならない加速と疾走感

「ヒロユキさん!すごいねこれ!!」
「おう!そうだろ!!もっと飛ばすぞ!!」
「うんうん!!」

わざとヒロユキさんの背中から顔を出して風を真正面に受けました
景色はあっというまにすぎさっていきます

これがバイクか

僕のドキドキはとまりません
もちろん2人とも免許なんか持ってないしヘルメットもかぶっていません
その「悪いことしてる」っていうドキドキ感もあって
僕の心臓は破裂しそうなほど踊っていました

僕より一回り以上大きな背中が風から僕を守ってくれます
何故だかもうヒロユキさんが大好きという感情にあふれてしまい
「ヒロユキ…」
と、ぼくは初めてヒロユキさんには聞こえないように呼び捨てにしました

そして今までは腰にしか触れていなかった体を
ほっぺたと上半身も全部くっつけて思いっきりギュッと抱きしめました
ヒロユキさんのからだが一瞬ビクッとなりましたが
なにもいわずそのままバイクを海沿いへとつながる道へと進めました
僕の鼓動はもっともっとドキドキして体中が熱くなりました

どんつきの堤防まで来るとバイクは止まりました

「どうよ?すごかっただろ?」
「…うん…。」
「どうした?怖かったか?」

ううん、と僕は首を横に振りました
だってバイクのエンジンが止まって堤防にもたれても
胸のドキドキがとまらないのに困っていたのです
ヒロユキさんの大きな背中にぴったりくっついてた感触が
まだ残ってて、もっとずっと抱きしめていたかったのです

これって…恋?
いやいやいやいや、ヒロユキさんも僕も男やし…ホモ?
えぇえええ?僕ってホモなの!?
もうわかんない。まだ未熟な性知識では頭がこんがらがって余計に熱っぽくなりました

「ほい」
ピトっと僕の額に冷たいジュースの缶が当てられました
ヒロユキさんが新しいジュースを買ってきてくれたのでした
二人でバイクが見える芝生の影を見つけて移動して足を延ばして座りました
さっきまで何にも感じなかったのに、隣にヒロユキさんがいるだけで
胸がドキドキします

「うーん、こっから見てもあのバイクは渋い。渋すぎる」
「うん。渋い。恰好いいね。」

海からの風がジリジリと焦げ付きそうな暑さの中、心地よく吹き抜けます
ヒロユキさんはセブンスターを加えてジッポで火をつけると
そのまま大の字になって寝転びました
ヒロユキさんがタバコを吸うのを始めてみました
「タバコは二十歳にならないと駄目なんだよー?」
「へへへ」
「へへへ」
「ヒカルも吸うか?」
「うん」
セブンスターを一本とジッポを渡してくれました
そのとき手が触れた瞬間またビクッとなってしまいました
僕は顔が真っ赤になってないか不安でたまりませんでした
生まれて初めての煙草をくわえて、ジッポを見よう見まねで火をつけました
???
いくらタバコの先に火をもっていってもタバコに火が付きません

「吸い込むんだよ」

なるほど。軽く吸い込むと炎がタバコのほうに寄ってきて火が付きました

「はじめは軽く口の中に煙をため込むように吸って、それを浅い深呼吸するみたいに吸ってみろよ」

ふむふむ
漫画のようにゲホゲホとなることもなく
軽い抵抗の後、スーっと肺の中に入っていきました
「お、うまいうまい」
くわえ煙草でヒロユキさんが手を叩いて笑っていました

一本吸い終わると、急に世界がぐるぐる回り始めて気分が悪くなりました
「気持ちわるい~~、世界がまわる~~」
そのままヒロユキさんの横に大の字に倒れこみました
しばらくすると気持ち悪さはとれて、フワフワして世界が回るだけになりました

言うなら今しかないな、と思って思い切ってヒロユキさんの方に顔を向けました



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夏休み 告白2

Category : Uninstall 1.01
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「ねね、ヒロユキさん?」
「んん?どうした?」
「ヒロユキって呼び捨てにしたいんだけどいい?」

一息に早口で聞いてみました

「…」
「あ、やっぱりだめかな?」
「い、いや、いいけど学校では『さん』つけろよ」
「やった!!」

「じゃあ、もう一個聞いていい?」
「まだあるのか…なんだよ?」
「僕、女の子の服着て女として学校とかいってるじゃん?」
「うん」
「一緒に居て、恥ずかしかったり…しない?」
「あ~~。別に何ともおもわんよ。ヒカルはだって女の子やろう?」
「こころ?」
「そうそう、恰好よりこころ」

その返事を聞けただけで、僕の心臓はバクバクしていました

「じゃあ言うけど、僕、ヒロユキのこと好きかも」
「…」
「いや、ホモとかじゃなくて女の子としてヒロユキの事すきになったみたい」
「…」
「聞こえてる?」
「…うん」
「じゃあなんかいってよ…」

「ヒカルは、裕子の事聞いただろ?親から」
「うん」
「俺とは一個違いでいっつも俺についてきて、すごくなついてたんだよ」
「うん、聞いてる」
「最初は俺も、ヒカルと裕子ダブらせて見てたんだよな」
「そうかぁ」

(妹扱いだったから優しくしてくれたのかぁ)
上半身を起こすと芝生に煙草を押し付け消すとヒロユキさんはこっちを向きました

「最初だけだった、それは。」
「え?じゃあ今は?」
「今は、ヒカルの言葉聴いて…大事にしたいって思ってるよ。前からヒカルの事好きやったし」
「そ、そうだったんだ?…僕の一方通行じゃなかったんだね…」

幸せでいっぱいになりました
なんとなく少しお互い照れて気まずい空気が流れました
その空気をヒロユキさんの一言が破りました

「俺と付き合ってくれるか?ホモとかじゃなくってさ、俺の女になってくれたらなって思ってる。なってくれるか?」

ヒロユキさんは、一息にそれだけ言うと初めて見る真っ赤に照れた顔でうつむいていました
ちょっといくらなんでもそれは早すぎやしないか?いきなりの直球に驚きました
でも、僕の返事はとっくに決まっていました

「うん…じゃなくて、はい。。。」

そう言ったとたんヒロユキさんはガバっと僕に覆いかぶさると
抗う暇もなく優しいキスをしてくれました
両手でようやく届く大きさのヒロユキさんの背中をぎゅっと抱きしめました
永遠のようにも感じましたし、一瞬にも感じました
やがてどちらからともなく離れました

残ったのは名残惜しさと、唇の感触
そっと触れ合った唇だけのキスでしたが僕にとっての初キスは
そのあとしたどんなキスよりも感動的で官能的でした

「そろそろ帰るか?」
しばらくの沈黙の後、ヒロユキさんは立ち上がって服についた芝生を払いました

「うん」

8月の太陽はまだうんざりするぐらい僕たちを照らしていたけど
今度は遠慮なく全身ぺったりヒロユキさんにくっつけて乗るバイクの
乗り心地に比べたら、全然大したものではありませんでした



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